幼児期からの英語習得、進学のグローバル化、塾通いをしない伸びやかな教育方針。こういった背景から、小中学校など早い段階で子どもの留学を検討する家庭が増えている。その留学先としてこの数年で注目を集めているのが、ニュージーランドだ。日本ではあまり知られていない、この教育先進国の教育制度と留学ノウハウをシリーズでお伝えする。今回のテーマは「未来教育スキル“世界1位”のニュージーランド」。
ニュージーランドといえば“羊が多い”というイメージだけでは、もはや時代遅れかもしれない。実はニュージーランドは、世界に誇るナンバー1がたくさんあり、特に教育先進国として今、世界から注目されている。政府機関「Education New Zealand」が世界に発信している情報を見ると、「世界1位」がたくさんあることが分かる。
未来教育指数(Education Future Skill)世界1位 by 英誌『エコノミスト』2017
“New Idea、New Tech”を合言葉に、未来的で総合的なニュージーランドの教育実績が評価されたのが、「世界各国の未来に向けた教育、世界1位」だ。このランキングは英誌『エコノミスト』の調査部門であるEconomist Intelligence Unit(EIU)が2017年に発表したもの。技術や産業経済が激変する未来において、若い生徒や学生たちが有望な人材として働き、変化する生活に対応できる力を備える教育がなされているかどうかを専門家らが分析した結果だ。
1位ニュージー、2位カナダ、3位フィンランド…7位 日本、12位アメリカ
「世界各国の未来に向けた教育」で重視された教育方針(学生に与えるスキルや環境)は、次の6つ。
- 他分野にまたがるスキル
- 創造的かつ分析的なスキル
- 起業家的なスキル
- リーダーシップスキル
- デジタル技術スキル
- グローバル意識と市民教育
まさに未来を切り開くスキルが挙げられているが、このランキング調査を担当した専門家の一人であるトニー・ワグナー氏(ハーバード大学シニア研究フェロー)は、次のように語っている。「生徒や学生が“何を知っているか”にもはや世界は興味がない。変化する未来において、既知の情報を使って“何ができるか”を知っている生徒や学生に、グローバルな世界は興味がある」。
さらに、教育環境として分析された項目は、「国の政策方針」「教育者の義務・規則」「社会・経済の研究」といった、学校や教師個人の力量にとどまらない、国や社会の関わりも教育に必要なインフラとしてカバーされている。その国の教育政策や、社会のジェンダー平等、多様性、ダイバーシティなども調査の対象なのだ。
その結果、1位にニュージーランド、2位カナダ、3位フィンランドと続いた。気になる日本は7位と健闘。これまで留学先として人気だったアメリカは12位になった。ちなみに日本はトップ10入りだが、「社会経済の研究」で順位が低く、特にジェンダー平等に関してスコアが低いことなどが指摘されている。一方、ニュージーランドは自然との共生、女性の活躍、多様性、ワークライフバランスなど全分野で高い評価を得て、総合1位になった。
生徒の学力も実証済み。OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに調査する生徒の学習到達度調査(PISA)では、ニュージーランドの教育システムが常に高く評価され、生徒のスコアも、読解・数学・科学の全分野で世界の平均スコアを上回っている。また、15歳の生徒で全分野で上位クラスに入る「オールラウンド」な生徒の割合は、世界平均値の2倍だ。
このようなハイレベルな教育結果をニュージーランドがたたき出している理由には、国が監査機関を設け、幼児教育、小中学校、高校、工科大学・ポリテクニック、総合大学と、教育の質を高く管理保証している取り組みが挙げられる。政府機関の一つである資格庁が、認証と登録制度を管理しているのだ。