大きな山を崩すには1点から

 ただ、柔軟に新しい方法を取り入れていくのが苦手な人もいるでしょう。その場合は、すべての仕事のやり方を一斉に見直すのでなく、「書類作成」「ミーティングの進め方」など、自分にとって、「特に時間を取られている仕事」だけに集中し、やり方を見直してみてはいかがでしょうか。「確かにムダがなくなり、時間の余裕が生まれた」という実感が得られれば、ほかの仕事も見直していこうというモチベーションが生まれるはずです。

 これは組織についても言えること。「会社が古いやり方を変えようとせず、ムダが多い」と感じ、何とかカイゼンしたいと思っている人は、まずは「会議の進め方だけに新ルールを適用する」といった具合に1点に集中させましょう。「大きな山を動かすには、まず1点を崩すような意識で取り組むことが重要です」と、マーケティングコンサルタントで、『一流の人はなぜ、A3ノートを使うのか? すべてを”紙1枚”にまとめる仕事術』(学研パブリッシング)、『ムダゼロ会議術』(日経BP社)などの著書もある横田伊佐男さんはアドバイスします。(具体的なノウハウは、6本目記事「社員を消耗させる「ムダ時間」、撲滅の方法は?」で紹介)

 年齢を重ねていくごとに、ぜひ心がけたいのが「投資時間を優先する」という意識です。時間には、自分を消耗させるだけの「消費時間」と、自分の成長につながる「投資時間」があります。

 例えば、今後やりたい仕事についてじっくり考えたり、新しい知識を学んだりするインプットの時間は「投資時間」。夜、早めにベッドに入り、翌日のためにぐっすり眠る時間も「投資時間」です。逆に、自分でなく誰にでもできる仕事や、頭を使わずに進めることができる、慣れ切った仕事などに向き合う時間は、すべて「消費時間」。すぐに形で表すことができるので、「仕事をした!」という達成感が得られやすいですが、そこに自分を成長させてくれる要素はあまりありません。

 「消費時間と投資時間のバランスを普段から意識し、意図的に消費時間を減らして投資時間に変えるように心がけないと、消耗するばかりで、『賞味期限切れの人』になってしまいます」と、元リクルートのトップ営業マンで、らしさラボ代表の伊庭正康さんは警鐘を鳴らします。

 人から振られた仕事であっても、内容をよく吟味し、「消費時間」を生むような仕事は減らしたり、時間短縮に努めることが大切です。「上司や取引先からの指示だから断れない」と思う場合でも、実はいくらでも減らしようはあります。「特急仕事」も減らせます。「人に仕事を指示する立場の人は、何となく『急ぎで』、と言ったりするものですが、交渉次第で、『もう少し後でも大丈夫』と言われることもあります」と伊庭さんはアドバイスします。(具体的なノウハウは、4本目記事「「超集中術」で育児疲れから仕事モードへ切り替える」で紹介)

 「営業の時間」など、聖域とされがちな領域の仕事も、例外ではありません。(具体的なノウハウは、6本目記事「社員を消耗させる「ムダ時間」、撲滅の方法は?」で紹介)