シビアだけど避けては通れない。「お金」のリアル

 大変だったのは体力面だけではありません。シビアな話ではありますが、経済的な負担も相当なものでした。

 まずは食費。若い男性や子どもが加わった食卓は、高齢の夫婦2人のそれとはわけが違います。しかも、平日は朝から晩まで私には仕事があるわけですから、娘夫婦も夫も満足する料理をふるまう、時間的&体力的な余裕もないわけです。そこで、つい近所の小料理屋さんに夕食を出前してもらうなどしていると、これが結構な出費となりました。

 また、産後の娘は、紙オムツやお尻ふき、子どものおやつなどを自分で買いに行くことはできません。当然、買い物に行った私が支払うことになります。孫を連れての買い物は、ついつい余計な物を買い込んでしまい、お財布の紐は緩みっぱなし。あとで家計簿で振り返ってみたところ、生活費(食費、光熱費)だけでも1カ月で約10万円、それ以外の出費も相当な額となっていました。

 同居した当初は、「こんなことができるのは今だけなんだから、構うものか!」と気にしませんでしたが、こうして実際にかかった数字を目の当たりにすると、正直、ため息もでます。思った以上の出費に、「ああ、もう少し考えて買い物をすべきだった」と猛省。かといって、いちいち娘に代金を請求するのもためらわれ、どうすることもできなかったのです。

もしかして、里帰り出産は必要なし?

 そんなこんなで終えた、娘の里帰り出産。改めて「自分のときはどうだったろう?」と思い振り返ってみると、ずいぶん反省することもあったような気がします。

 私が実家に里帰りをしたのは、一人目の子を出産したときでしたが、母は仕事をしていましたから、今思えば、仕事と産後ケアの両立はさぞ大変だったろうと思います。これは、自分が経験して初めてわかりました。しかし、当時の私はというと、そんな母を気遣うこともなくいつも不平不満ばかり言っていました。子どもが夜泣きをして寝不足が続いたときには、「たまには赤ん坊の世話を代わってほしい」「私を寝かせてほしい」と、母を恨めしく思ったこともありました。

 今思えば、産後クライシス真っただ中だったのかもしれません。母のちょっとした行動や言動に傷ついたり、落ち込んだりしました。母はそんな私に、「産後の動物は殺気立って誰も寄せ付けないというけれど、人間も同じね」といって笑っていましたが、心の中ではさぞ悲しんでいただろうと思います。

 二度目の出産では実家に帰らず、長男だけを実家に預け、私は自宅で夫と過ごすことにしました。夫はさほど家事に協力的なタイプではありませんでしたが、それでも食事は買ってきてくれたし、洗濯物は干してくれたので、私は赤ん坊と寝ていればよかった。「こんなものか。それなら家事のために実家に帰って、わざわざ母親と衝突する必要なんてなかったのでは?」なんて思ったものでした。

 これが、「本当に里帰り出産は必要か?」という疑問を抱くことになった私の体験談です。次回からは、現代のライフスタイルに合った「産後ケア」について、専門家と一緒に考えてみたいと思います。

井上真花 (いのうえまいか)
いのうえまいか 有限会社マイカ代表取締役。1961年に長崎県に生まれ、現在は東京都に在住。1995年からフリーライターとして雑誌、書籍などで執筆し、1997年には技術評論社の編集部に入社。その後再び独立し、2001年に有限会社マイカを設立。普段は、夫と二人暮らしだが、休日にはしばしば5人の孫の「ばぁば」になる。

文/井上真花 イメージカット/PIXTA