子どもとの「人間関係」を見直した

 またさらに追求したのが、「子どもとの人間関係」だ。

 「幸福度を決めるのはいい人間関係をいかに築いているかだと私は思っています。子どもとの関係も立派な人間関係ですから、例えば子どもがいたずらをするのって、親に見てほしい、注目してほしいという気持ちがあるから。でもそれは、親も同じことで、子どもに何か話しかけて無視されると、子どもが大好きだからこそ親でも傷つき、イライラする原因にもなります

 でもそれは、言わなければ子どもには伝わらない。だから「無視されたらお母さんも傷つくよ。手が離せないならそう言って、と伝えることにしました」

 どんなに小さな子どもでも、理由を言えば分かるもの。分かればやらなくなるし、それによってイライラが解消されて、いつもニコニコしていられるようになる。「お母さんが笑顔でいられれば、家庭内の雰囲気はグッとよくなりますよね」と山田さん。

 家事に追われてイライラして、子どもに無視されてイライラして、笑顔が減って家族関係にひずみが出ている。そう感じたら、まずはやめられる家事を見つけて、子どもに気持ちを伝えてみると、悪循環が好循環に変わっていきそうだ。

家事の見直しは自分自身の「いらない」を見直すこと

 一方で、山田さんはたとえイライラしたり家事がうまく回らなかったりしても、「自分は本当にダメな人間だなと思う必要はないと思います」とも。

 「人間、誰しも苦手なことはありますし、失敗することもあります。でも、一度それをやったくらいでその人の価値は下がりませんよね」

 また、やめてほしいと思うことを、夫にでも子どもにでも、言葉で説明することはとても大切だと山田さん。

 「ご飯の前にお菓子を食べようとしていたら“これからおいしいご飯を一緒に食べようと思っているから、お菓子は食べないでほしいな”と伝えるなど、なぜ、そうしてほしいのか、きちんと理由を言えば、子どもも分かってくれることが多いと思います」

 家族や友人を早くに亡くし、その経験からも時間は寿命そのものだと考え、イライラすることに時間を費やしたくないと思うようになったという山田さん。

 「人柄で寿命が決まるわけではないし、若くても病気を患ったり、交通事故に遭ったりするかもしれません。だから常に、イライラする原因を取り除いていきたい

 家事の見直しは自分自身の「いらない」を見直すことであり、家庭内の人間関係の見直しでもある。まずは自分の「いらない」を見つけるところから始めてみると良さそうだ。

(取材・文/日経DUAL編集部 山田真弓 イメージカット/鈴木愛子)

山田綾子(やまだあやこ)
家事・育児コンシェルジュ
山田綾子 実家なし、夫の手助けなしのワンオペ育児の状態で、3人の子どもを育てた経験を持つ。お母さんが息抜きできる場所として2011年「親子カフェjoy」を開店。著書『その家事、いらない』(ワニブックス)がある。