5月号の『「家事ストレスフリー」生活のススメ特集』でも取り上げましたが、家事は働くパパやママにとって、大きなストレスになりうるものです。場合によっては家族関係にまで、大きな影響を与えてしまいます。この連載では各家庭で負担になっている家事を見直し、家族時間をよりよいものにしていくために、「家事負担」の軽減のヒントをプロフェッショナルの皆さんに伺っていきます。

 今回は家事・育児コンシェルジュの山田綾子さんにお話を伺いました。山田さんは3人の子どもを育てながら「親子カフェjoy」を2011年に開店。夜9時には子どもと寝て、土日祝日は子どもたちと遊び、平日のみ自宅近くの店舗で好きなことを仕事にするという夢を実現しています。著書『その家事、いらない。』(ワニブックス)にある通り、山田さんは夢を実現するまでの間に、「家事をやめる」ことに尽力してきました。いったい、どうやって「やめた」のか。やめようという気持ちに至るまでの、心の葛藤とは?

母子家庭で育ち、出産前に母が他界。頼ったのは「育児書」

 家事・育児コンシェルジュの山田綾子さんは現在、11歳、8歳、5歳の3人の子どもを育てながら、神奈川県藤沢市で「親子カフェjoy」を経営。共働き家庭で夫は仕事で帰りが遅く、いわゆる“ワンオペ育児”の状態ながら、子どもとの時間を大切にしているのが印象的だ。そんな山田さんは「家事をやめる」ことで、家族との穏やかで幸せな毎日を手に入れてきた。もちろん、「やめる」くらいだから、ここに至るまでに様々な心の葛藤があった。

 「私自身は母子家庭で育ち、幼少期から母は働きづめで、私が妊娠する前に亡くなってしまいました」という山田さんは、20代前半で祖母が病に倒れ、看病・介護を続ける中で第1子を妊娠。出産から1カ月後には祖母が他界してしまう。

 「母親が既にいない状態で、しかも祖母が亡くなったことで“私は子どもの役に立てるような人間なのかな”と、いきなり子育てに対する不安を抱えてしまいました」

 夫の実家は関西でそうそう頼れる距離ではないし、山田さんはとても責任感が強く、「すべて自分にかかっている。この責任をしっかり果たさなければ」と頑張りすぎてしまうタイプ。加えて読書好きだったこともあり、ベストな子育てを求めて育児書を買い漁り、読み倒して知識をどんどん増やしていくことに。

 「何をどの時期に与えればいいのかとか、赤ちゃんとの過ごし方、発育発達、言葉がけなど、育児書の通りにやっていれば間違いはないだろうと、とにかく頑張ってしまいました。今思うと、長男はちょっとかわいそうなくらい(笑)。何カ月だとこれができていないといけないんだ…などと育児書と比較して、できていなかったら悲しむという。それくらい、“自分の子育てはこれでいいのかな”という不安な気持ちが大きかったんです」

 一方、唯一そばにいて頼れるはずの夫が何をしていたのかというと、真面目な山田さんの性格を分かっているからこそ、妻がすることに手出しができなかったという面もあったそう。結果、山田さんは日々の食事作り、掃除、洗濯、片付けなど家事全般も1人で切り盛りし、「良い妻、良い母」を目指して、頑張り過ぎなほど頑張ることになってしまった。

 そんな山田さんの気持ちが変わったのは、2人目出産後のある日のこと。

山田さんはベストな子育てを求めて育児書を買い漁り、読み倒して知識をどんどん増やしていったという
山田さんはベストな子育てを求めて育児書を買い漁り、読み倒して知識をどんどん増やしていったという