子どもの前でニコニコ笑えない。だから完璧主義をやめた

 「私の母は専業主婦で、私とは考え方も時間の使い方も全く違いました。私には年の近い兄が3人いて、家庭内が毎日、保育園状態だったのですが、お手伝いさんもいて家のことをやってくれていました」

 家の中はいつも完璧な状態で、家に帰れば温かいおいしい食事が出され、お風呂も準備されていて、すぐに寝られる状態になっている。そんな環境で育ってきたため、家庭を持ったら子どもや夫に対し、同じように完璧な状態を用意しなければならないと思っていた。

 ところが結婚後、新婚時代は特に、おいしいものや好きなものを作って夫を喜ばせてあげたいという気持ちが強く、どんどん作ることで中途半端に食材が残るようになり、2人暮らしなのに食費がすごくかさんでしまっていたそう。

 さらに子どもが生まれてから「この家計バランスは違うな」と感じ、さらに家事がうまく回っておらず、家の中がぐちゃぐちゃな状態にストレスがたまっていった。仕事も子育ても家事もちゃんとしたいのに、どうしてなの? と。

 そのストレスが、子どもが動きだす1歳すぎに、一度爆発。家をきれいに保ちたいけれど子どもは動き回って目が離せない。仕事も再開して忙しい。そんななか「すべてを完璧にする」のは無理だ! と思った高木さんは、自分の思考を「完璧主義」から「まいっか」に変えたという。「『まいっか、えへへ』と笑えるようにならないと、一番大切な子どもの前でニコニコ笑っていられない。だから、完璧主義をやめたんです

どんな料理でも「おいしいね」と心から言える子に育てるのが一番

 ただし、完璧主義をやめたからといって、自分を甘やかしても自己嫌悪に陥るだけ。だからどこまでなら捨てられるかを自分で把握するようにした。「掃除なら死なない程度に清潔な環境を保とうとか、洗濯もすぐに畳んでしまわなくても大丈夫とか

 特に大きかったのが食事。料理の仕事をしているからといって、毎日完璧な料理を用意しなくてもいいと考えを改めた。「子どもの食育を考えたときに、コンビニのおにぎりでも、ファミレスでも、三ツ星レストランの料理でも同じように『おいしいね』と心から言える子に育てるのが一番の理想だと思ったんです。だから立派な料理を作るために子どもとの時間を削ってイライラするよりは、時には簡単な食事の日があってもいいと思えるようになりました」