「謝らない子」への対応はどうしたらいい?

 実際に保育園であった出来事です。床に積み木を並べていた3歳の男の子が、突然その積み木に向かって別の積み木を投げました。どう声を掛けようかと迷っていたところ、他の保育士がやってきて「なんで積み木を投げたの!」と男の子を叱り始めました。

 単なる遊びのつもりだったのか、その子は怒られている理由がピンときていない様子でした。そこへ保育士が「『ごめんなさい』は!」と畳みかけます。男の子はイライラしてきて、近くにあったカーテンをたたくような仕草を見せました。するとまた保育士が「なぜカーテンをたたくの!」と怒ります。黙ったままの男の子に対して、保育士はさらに「『ごめんなさい』は!」と続けます。

 「なぜ積み木を投げたの!」が最初の「怒り」だとしましょう。次の「『ごめんなさい』は!」は2番目の怒りです。理由を言わないから、とにかく謝らせようというわけです。さらに、いら立った男の子がカーテンを乱暴に扱ったことに対する怒りが3番目。それを謝らないことについての怒りが4番目。この一連の出来事の中で、4つの怒りが生まれてしまいましたが、本来、保育士や親がこの子に対して怒ったり注意すべきことは、「積み木を投げた」ということについてだけなのです。

 「積み木を投げてはダメ」。この最初の怒りだけを気持ちを込めて伝えれば、子どもも何がいけなくて怒られたのかが分かります。それなのに、つい大人は「あのときもやってたよね?」「さっきもママ言ったよね?」と、芋づる式に4番目、5番目の怒りを生み出してしまいます。そうすると子どもも、一体、自分が何について怒られているのか分からなくなってしまい、またしばらくして同じことをしてしまうんです。

「ごめんなさい」は大人が強制することではない

 怒るときは、「今、やってしまったいけないこと」だけを怒るように心がけてください。それに対して、ごめんなさいを言うかどうかは、子どもの自由。必要と感じたら謝ってきますし、そうしない子もいるでしょう。大人が強制することではないんです。どういう反応をするのかはその場の声掛けで決まるのではなく、普段の接し方によって決まります。

 反射的に怒る前に、「私は今、子どもが積み木を投げたことだけを怒る」と意識することが大切です。謝らないことに怒ったり、過去の怒りを持ち出すのはやめましょう。