リーダーシップは行動によって生まれる

 時代の大きな転換点には、従来とは全く異なる価値観や思想に立脚した新しいリーダーが求められるのは間違いありません。しかしリーダーとは、目指してなれるものではありません。ありたい未来を思い描き、自らを信じて行動する。そうして何かを成し遂げたとき、その人がリーダーと呼ばれるようになる。リーダーとは、それ自体を「目指す」ものではなく、結果として「なる」ものだからです。

 だから私たちは、未来を創り出すリーダーが数多く登場してほしいと願っていますが、リーダーを育成できるとは考えていませんし、「こういう人になりましょう」と、特定のリーダー観を押しつけるような教育をするつもりもありません。

 人間や社会の本質は何か。自分が求めるのはどんな社会か。どういう未来が見てみたいか。絶えず俯瞰(ふかん)して自問自答できる人が増えれば、結果的にその解として自分の未来を模索し、行動する人たちが現れてくるでしょう。そのような場を提供する教育機関でありたいと考えています。

 至善館にはまだ卒業生はいませんが、私はこれまで海外の経営大学院や、企業家育成のための教育機関「アイ・エス・エル」において教べんを執り、多くの優れたリーダーが生まれていくのを見てきました。卒業生たちに必ず言ってきたのは、「皆さんには、未来に挑戦する権利と責務がある」ということでした。

 どんな未来を切り拓いていくかは、私たち一人ひとりにかかっています。挑戦するのは権利ですから、自分が信じた道を歩いていけばいい。ただ恵まれた環境に育ち、さまざまな人々から支援されているからこそ、色々なことに挑戦できる。そのことに感謝して、自分が未来に挑戦することに大きな責任を負っていることを自覚してほしいのです。

 至善館からも、そのような正しい責任意識を持ったリーダー人材が巣立っていくことを願っています。

構成/若槻基文 撮影/川田雅宏