子どもの脳や身体、味覚は、日々の食事によってつくられます。一児の母であり、「味覚の育て方」の講座が大盛況のフードアナリスト・とけいじ千絵さんが、味覚を育て、勉強やスポーツなどを頑張れる子になるための食べ方、食べるものをわかりやすく解説します。『子どもの頭がよくなる食事』(日経BP社)から、一部をお届けします!

 前回、「脳にいい食習慣」として、ブレインフードが持つ栄養素を最大限に生かせる食材の組み合わせについてお伝えしました。他にはどんな食習慣があるのでしょうか。

(2)魚は「煮る」がベスト

 例えば脳によいとされているDHAをたっぷり含んだお魚、どんな加熱調理をしていますか。

 例えば、電子レンジのグリル機能や魚焼きグリルを使った加熱であれば、庫内は300℃にもなります。油で揚げる場合、温度は180℃程度です。フライパンで強火で炒める場合は200℃近くになります。

 魚に含まれる油は熱に弱いので、高温調理をすると、せっかくの油が容易に酸化してしまいます。油の酸化には酸素・熱・光が関係しますから、なるべく高熱に触れない状況をつくることが大切です。

 おすすめは水を使った加熱調理です。調理の際に水を使うと、水の沸点は100℃ですから、100℃までしか上昇しません。具体的には蒸す、煮る、ゆでるといった加熱方法がいいでしょう。また、空気中の酸素に触れると酸化が起こるため、「焼き魚」よりも煮汁に魚が浸かった状態の「煮魚」のほうが油が酸化しにくく、脳にいい調理方法といえます。

 いつも焼き魚にするところを、さっと短時間煮て煮汁と共にいただく、野菜と魚を一緒に蒸してしょうゆでいただくというように、水を使った加熱調理を取り入れてみましょう。魚以外の加熱でも、ぜひ調理法を意識してみてくださいね。

(3)油のボトルや抽出方法にも気を配る

 脳にいいといわれる亜麻仁油やえごま油などのオメガ3系油。これらを購入する際にも着目すべき点があります。魚油と同様、オメガ3系の油は非常に酸化しやすいですから、酸素、熱、光に気を付けましょう。お店で買うときは透明のボトルではなく、黒く遮光されているボトルのものを選びましょう。

 また、ある原材料から油を抽出する場合、いくつかの方法があります。代表的なものが低温圧搾や高温圧搾、そして溶剤を使って抽出する方法です。ボトルに抽出方法が表示されていますから、一番酸化を防ぐことができる「低温圧搾(コールドプレス)製法」を選ぶといいと思います。購入したら冷蔵庫で保管し、なるべく早く使い切ってください。

(4)トランス脂肪酸を避ける。マーガリンは要注意!

 トランス脂肪酸には天然のものと人工のものがありますが、問題となるのは、植物油に人工的に水素を添加して固形にしたものです。化学的に精製された油や、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッドなどに入っています。自然界に存在しない脂肪酸であるため、体内で分解しにくく、脳の発育への悪影響も指摘されています。

 アメリカでは2018年以降、トランス脂肪酸の使用を禁止するとしていますが、日本では禁止の検討はされていません。アメリカが日本に比べて、トランス脂肪酸の年間摂取量桁違いに多いからだと指摘されています。

 日本国内での摂取量は少ないとはいえ、世界では使用禁止の流れであるということも考慮して、少なくとも脳の発達が著しい幼児期までは控えることが望ましいでしょう。離乳期・幼児期の子どもが食べる市販のおやつにも入っています。

(5)糖質の「質」を見直してみる。子どもに糖質制限はNG

 脳に必要なブドウ糖。このブドウ糖も糖質ですが、ぜひ、糖質の質を見直してみてください。近年、糖質制限がはやっていますが、きちんと脳を働かせるためには十分なブドウ糖が必要です。糖質自体を制限することは、子どもにはおすすめしません。

 また、糖質制限をすると避けられがちな白米ですが、炊き立ての白米のおいしさは、ぜひ子ども時代に知っておいてほしいと思います。他方で、白米はビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富な胚芽やぬかを取り除いてしまっていますから、分づき米(玄米と白米の中間のお米)のほうが、脳に必要な栄養素が含まれています。同様に精白されたパンやパスタ、白砂糖よりも、全粒粉パン・パスタ、未精製の黒糖やきび糖などのほうが栄養素は豊富です。

 また最近、小麦粉食品に含まれるグルテンの問題も注目されています。近年の小麦は品種改良を重ねており、小麦の中のグルテンとよばれるタンパク質が非常に増えています。このグルテンが腸でうまく消化できない「グルテン不耐症」という症状が欧米で増加しているといわれており、「グルテンフリー」の食品が流行しています。腸で消化ができないという不調は、「脳腸相関」の関係である脳の働きにも影響を与えてきます。また、パンやパスタはどうしても和食に合いづらいという側面もあります。

 糖質を制限するのではなく、糖質の「質」を見直してみましょう。精製されたものをすべてやめる必要はありません。

 例えば、パン、パスタ、白米、精製された白砂糖を使ったお菓子の代わりに、全粒粉のパンやパスタ、分づき米、黒糖やはちみつなど白砂糖に代わる甘味料を、ときどき食卓に取り入れてみてください。ふだんの食事にも新鮮さが生まれますし、その積み重ねが脳にいい食習慣につながると思います。

(写真/品田裕美)

食べ方と食べ物で脳と味覚を育てる!
『子どもの頭がよくなる食事』

子どもの脳や身体、味覚は、日々の食事によってつくられます。一児の母であり、「味覚の育て方」の講座が大盛況のフードアナリスト・とけいじ千絵さんが、「集中して勉強する」「運動を楽しむ」「元気に過ごす」ための食べ方、食べるものをわかりやすく解説します。すぐに作れるレシピも40種類紹介!

■第1章 頭がよくなる食べ方
■第2章 脳と味覚はどう育つ
■第3章 お悩み別!親子で取り組む食育

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