子どもの脳や身体、味覚は、日々の食事によってつくられます。一児の母であり、「味覚の育て方」の講座が大盛況のフードアナリスト・とけいじ千絵さんが、味覚を育て、勉強やスポーツなどを頑張れる子になるための食べ方、食べるものをわかりやすく解説します。『子どもの頭がよくなる食事』(日経BP社)から、一部をお届けします!

 大勢で食卓を囲むことが当たり前だった時代は、人と一緒に食事をし、他人に合わせることで、適切な食べるスピードを身に付けていました。今は、母子だけの食事が当たり前だったり、子ども一人きりでの食事もあったりと、食べるスピードを変える機会がなかなかありません。

食べるのが早すぎる場合

 食べるのが早すぎる最大の原因は、きちんと噛めていないことです。噛む回数は第二乳臼歯という一番奥の子どもの歯が生えてくる2歳半から3歳くらいに決まってきます。この時期にしっかりと噛む習慣を付けることがまず大切です。

 噛むことは自転車に乗ることと同じ。練習によって身に付くもので、自然と上手になるものではありません。目安としては、一口につき30回。歯を上下左右に動かして、きちんと奥歯ですりつぶして「噛む」ということを教えてあげましょう。特に幼児期を過ぎたら、歯を上下に動かすだけではなく、キリンが草を食べるときのように左右にも動かして噛むように伝えてください。

 歯は食べ物が口の中に入って最初に出合う「消化のための器官」です。永久歯がない分、大人と同じような食事をしていたら、それだけ内臓に負担がかかってしまいます。噛む力を養うためには、固いものや繊維質の多いものを、ゆっくりとよく噛みしめる習慣が必要です。これはなかなか意識しないとできないので、時間のある休日など「噛む力を鍛える日」を決め、食材を選んでみてください。

 「噛む音を聞かせて」「どんな音がしているの?」と言って、子どもに実際に耳を近づけ、音を聞いてみましょう。子どもは張り切って噛んでくれると思います。30回を目安に噛んでみてと促し、実際に回数を数えてみるのも有効です。

 よく噛むためには何より、ゆっくりと食事ができる環境をつくる必要があります。早く食べなさいと急かしていては、よく噛めるわけがありません。

 特に幼児の場合、食べるのが早すぎる子はたくさん食べる場合が多いので、食卓に時計を置いてみましょう。「何分になったらお代わりしていいよ」と時間を決めると、目の前にある食べ物が無くなってしまうのが嫌で、子どもはゆっくりと食べるようになります。ゆっくり食べることは、きちんと噛むことにつながります。

食べるのが遅すぎる場合

 「子どもが食事を食べるのが遅い」という悩みはとてもよく聞きます。ですが、ゆっくり食べるということ自体は、本来はさほど問題ではないのです。問題なのは、そのことで大人がイライラしてしまったり、必要以上に怒ってしまったりして食卓に緊張感が走り、食べることは楽しくない、と子どもが感じてしまうことです。また、小学校における近年の給食の時間は、20分以内といわれています。配膳などの時間も考えると仕方ない部分もあるかもしれませんが、短いですよね。食べるのが遅い子の場合、本当は完食したいのに、強制的に給食の時間が終わってしまうこともあるかもしれません。

 好き嫌いがないにもかかわらず、食べるのが遅いというだけの理由で、給食を完食できないのはとてももったいないことです。栄養も十分に取れませんし、すぐにおなかがすいて、帰宅後におやつを食べすぎてしまうことにもつながります。食べるのが遅い子は、少しずつ早く食べられるようにしましょう。

(写真/品田裕美)

食べ方と食べ物で脳と味覚を育てる!
『子どもの頭がよくなる食事』

子どもの脳や身体、味覚は、日々の食事によってつくられます。一児の母であり、「味覚の育て方」の講座が大盛況のフードアナリスト・とけいじ千絵さんが、「集中して勉強する」「運動を楽しむ」「元気に過ごす」ための食べ方、食べるものをわかりやすく解説します。すぐに作れるレシピも40種類紹介!

■第1章 頭がよくなる食べ方
■第2章 脳と味覚はどう育つ
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