子どもの脳や身体、味覚は、日々の食事によってつくられます。一児の母であり、「味覚の育て方」の講座が大盛況のフードアナリスト・とけいじ千絵さんが、味覚を育て、勉強やスポーツなどを頑張れる子になるための食べ方、食べるものをわかりやすく解説します。『子どもの頭がよくなる食事』(日経BP社)から、一部をお届けします!

量、味などのレシピを変える

 前回、書いたように、ピーマンの肉詰めが嫌いな子に、ピーマンの肉詰めを毎日食べさせたところで、ピーマンが嫌いという回路が太く強くなるだけですから、意味がありません。少量にする、盛り付けを変える、切り方を変える、調理法を変えるなどして、神経回路のリニューアルが必要です。

 苦手なものは、うんとハードルを下げてあげましょう。具体的には、苦手なものを出す場合はごくごく少量、小指の先くらいの量を盛り付けてください。それを口にしたとき、食べられたことをきちんと褒めてあげましょう。器やフォークなどに好きなキャラクターものを使ってみるのも手ですね。

 また、苦手な野菜は、ポタージュにする、野菜ジュースにするなどしてハードルを下げましょう。よく「ポタージュにしたり、細かく切って混ぜ込むなどして、分からないようにして食べさせることには、意味がないの?」という質問を受けますが、大いに意味があります。

 さりげなくピーマンを混ぜ込んだ炒飯のお弁当を気付かずに食べた後に、実はピーマンが入っていたんだよ、と種明かしをしてみてください。「ピーマンは見えなければあまり気にならない」という中立の回路が太く強くなってきます。さらに、「ピーマンが食べられるようになったね」と親や先生など信頼している人から言われると、ピーマンを食べることで自分が認められるという快刺激が生じ、ピーマンを克服できる可能性が高くなります。

 調理法としては、苦味は塩味や脂肪味が合わさると感じにくくなるという特徴があります。章末に載っているレシピも参考に、子どもが食べやすくなるよう「ひと手間」を加えてあげましょう。例えば、煮込んだ野菜が苦手な子には、あえて煮込まず形を大きめに残す、細長くカットした野菜は食べにくいのでダイス状にするなど、切り方を変えたりするちょっとした工夫も必要です。

楽しい環境をつくる

 嫌いなものがあると、「残さず食べなさい」などと強制的な言葉をかけられることが多く、ネガティブな記憶となりがちです。食卓で出すのではなく、キッチンで味見だよと言って一口食べさせたり、子ども自身が料理を作ったりすると食べる意欲がわきます。すぐには口にできなくても何度か繰り返すうちに、「あれ、そんなに嫌じゃないかも」と思える瞬間がくると思います。

 お手伝いをする際には、材料を洗う/切るという最初の工程よりも、混ぜる/味付けをする/盛り付けるなどという料理工程の最後を任せるほうが、完成した達成感や喜びを味わうことができるので、おすすめです。

これだけはダメというものをつくらない意識

 苦手な食材があっても揚げ物、ポタージュスープなどの調理法であれば食べられるというのであれば、それでよしとしてください。特に幼児期は好き嫌いが最も多い時期です。どんな調理法をしてもダメ!という食材をつくらないということをまず目標にしましょう。いろいろな味を知って味覚が豊かになると、自然と好き嫌いを克服できたりしますから。

好き嫌いは感性が豊かな証

 好き嫌いがあるということは、それだけ感性が豊かな子だということです。食べ物の味をきちんと感じられている、いろいろな味、におい、形があるということに気付くことができているという証です。

 私自身は好き嫌いのひとつふたつあっても、まったく問題がないと思います。私も子どものころはピーマンと玉ねぎが大嫌いでしたが、いつもの間にか大好きになりました。そんなものだと思うのです。私は講座で、子どもの好き嫌いにどう取り組んだらいいのかを皆さんにお伝えしています。それは日々、子どもの食と真正面から向き合っているお母さん・お父さんたちの心を軽くしたいからです。いろいろな食材があるのですから、ほかの食材で栄養をカバーすればいいだけのことです。ただ、嫌いなものが多すぎて、世の中にはたくさんおいしいものがあるのにチャレンジしてみよう!と思えないのは、少しもったいない気がします。

 大切なのは、試行錯誤しながら、子どもがふと「食べてみよう」と自然と受け入れられる日がくるまで気長に待つことです。決して無理強いをしないことです。

 そしてなかには、好き嫌いがとても多くて克服できない子もいます。そもそも食べることに興味がない子もいます。それも個性です。世の中には食以外にもすばらしい楽しみ、喜びがあふれていると思います。あまり気負わず、ゆったりとした気持ちで、気長に取り組んでいきましょう。

「世の中には食以外にもすばらしい楽しみ、喜びがあふれていると思います。あまり気負わず、ゆったりとした気持ちで、気長に取り組んでいきましょう」
「世の中には食以外にもすばらしい楽しみ、喜びがあふれていると思います。あまり気負わず、ゆったりとした気持ちで、気長に取り組んでいきましょう」

(写真/品田裕美)

食べ方と食べ物で脳と味覚を育てる!
『子どもの頭がよくなる食事』

子どもの脳や身体、味覚は、日々の食事によってつくられます。一児の母であり、「味覚の育て方」の講座が大盛況のフードアナリスト・とけいじ千絵さんが、「集中して勉強する」「運動を楽しむ」「元気に過ごす」ための食べ方、食べるものをわかりやすく解説します。すぐに作れるレシピも40種類紹介!

■第1章 頭がよくなる食べ方
■第2章 脳と味覚はどう育つ
■第3章 お悩み別!親子で取り組む食育

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