子どもの脳や身体、味覚は、日々の食事によってつくられます。一児の母であり、「味覚の育て方」の講座が大盛況のフードアナリスト・とけいじ千絵さんが、味覚を育て、勉強やスポーツなどを頑張れる子になるための食べ方、食べるものをわかりやすく解説します。『子どもの頭がよくなる食事』(日経BP社)から、一部をお届けします!

「朝ごはんを食べると眠くなる」は子どもには当てはまらない

 朝ごはんはなぜ大切なのでしょうか? 文部科学省国立教育政策研究所の調査によると、学力や運動能力などにおいて、朝ごはんを食べている子は、食べていない子に比べて優れていることが分かっています。

 もちろん、このデータには朝ごはん以外の生活習慣の要素も影響しています。通常、子どもは8~10時間ほど寝ています。夕食の時間から半日ほど時間が経っている場合もあるので、朝起きるころにはおなかがすいているのが普通です。それにもかかわらず、おなかがすいていないということは、夕食が遅かったり、夜寝る前にお菓子を食べていたり、睡眠が足りていなかったりするのかもしれません。親自身が朝食を食べず、子どもの朝食も用意しないなど、朝ごはん以外の生活習慣や家庭環境が複雑にからんでいる場合もあります。ですから、早寝早起きや夜型生活の改善など、規則正しい生活を送ることがまず大切である、という前提でお話をします。

 例えば大人のビジネス書などでは、朝ごはんを食べないほうがいいという意見も目にします。ごはんを食べると消化のために胃に血液が集中し、脳の血液不足でぼーっとしてしまうため、午前中の作業効率が落ちるというのがその理由です。

 しかし、特に子どもの場合、睡眠をしっかりとっていれば、ごはんを食べて眠くなるということはありません。むしろ、子どもにとって、朝食は3食の食事のなかで、最も大切といっても過言ではないのです。

 理由はふたつあります。ひとつは、朝食は学校に行く前の食事だからです。午前中の授業を集中して聞けるかどうかは、朝ごはんで何を食べたかが大きくかかわってきます。

 もうひとつは、朝ごはんは、一番家族が集まりやすい食事だからです。夜ごはんを家族全員そろって食べることは、仕事や習い事、塾などの都合で難しいかもしれません。でも朝ごはんであれば、家族一緒に食べられるという家庭も多いのではないでしょうか。

 食事は単に栄養を摂取するだけではなく、家族の大切なコミュニケーションの場です。食文化や作法などを学ぶ場でもあります。核家族化が進み、家族それぞれが忙しい現代では、食卓を共に囲むということを意識していかないと孤食化が進みがちです。せめて朝食は、家族一緒に取れるよう工夫をしていきましょう。

朝食は主食だけでなく、豚肉・大豆・果物などを

 先ほど、朝食が学校での学習効率に影響すると書きましたが、朝食の内容について見ていきましょう。

 学習効率に大きくかかわる脳。脳が働くための唯一の栄養素は「ブドウ糖」です。そして脳がブドウ糖を上手に使うためには、必須アミノ酸のリジン、ビタミンB1などの栄養素が必要です。

 リジンは、肉・魚などの動物性タンパク質や、大豆製品に多く含まれます。ビタミンB1は豚肉が有名ですね。また穀類の胚芽部分、柑橘系の果物にも含まれています。朝食にはパンやごはんなどの主食だけではなく、これらの栄養を含んだおかずが必要ということになります。

 では、次に主食について考えてみましょう。ブドウ糖が必要なら、「あんぱん」のような菓子パンでもいいのかというと、そうではありません。

 最初に取る朝食(ファーストミール)でGI値の低いものを食べて血糖値を穏やかに上げると、朝食後だけでなく、次に取った昼食(セカンドミール)後の血糖値も低く抑えられることが分かっています。これを、「セカンドミール効果」といいます。

 例えば朝食に、菓子パンなどの高GI値のものを食べると、急激に血糖値が上がり、それを下げるためにインスリンが分泌されて、今度は急激に血糖値が下がります。そのような血糖値の乱降下は、昼食後の血糖値の上昇にも悪影響を及ぼします。ですから、朝食では低GI値を心がけましょう。

 具体的には、白米よりも胚芽米を、小麦粉は全粒粉を選びましょう。また、「酢」「食物繊維」「乳製品(牛乳やチーズなど)」「豆類(納豆など)」を併せて取ることで、GI値を下げる効果があるので、上手に組み合わせてみましょう。

 なんだか難しく感じるかもしれませんが、あんぱんと野菜ジュースより、前の晩の主菜おかずに玄米ごはんというほうが、同じ「楽チンごはん」でもよい朝食だといえます。

(写真/品田裕美)

食べ方と食べ物で脳と味覚を育てる!
『子どもの頭がよくなる食事』

子どもの脳や身体、味覚は、日々の食事によってつくられます。一児の母であり、「味覚の育て方」の講座が大盛況のフードアナリスト・とけいじ千絵さんが、「集中して勉強する」「運動を楽しむ」「元気に過ごす」ための食べ方、食べるものをわかりやすく解説します。すぐに作れるレシピも40種類紹介!

■第1章 頭がよくなる食べ方
■第2章 脳と味覚はどう育つ
■第3章 お悩み別!親子で取り組む食育

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