人が野外に放したことをきっかけに増えてしまったアカミミガメやカミツキガメなどの外来生物は、最後の1匹まで取り除かなければ元の生態系を回復させることはできません。そのためには継続した取り組みが不可欠ですが、駆除には当然ながらお金がかかります。そうした点を踏まえて、地域の人々が自治体と連携して外来種対策に参加するしくみを作ることが大事だと加藤先生は言います。今回は、静岡市が行っている市民参加型の調査活動を紹介します。

生き物たちの楽園だった遊水地 現在は外来種の汚染源に

 今年7月、静岡市にある麻機(あさはた)遊水地で、カミツキガメをはじめとする外来生物の捕獲調査を行いました。これは、市が主催し、私が所属する静岡大学と地域の中高生、市民が協力して、2015年から継続して行っているもの。事前に参加者を一般公募し、約40人の方々が集まりました。中学生以上が対象ですが、参加する大人に連れられた小学生の子どもたちもけっこういましたし、近隣に住む小学生も歩いて見学にやってきたりしました。

 麻機遊水地は、地域を流れる川が昔は大雨のときによく氾濫したため、増水した水を引き込む目的で作られました。防災用の水辺ですが、野鳥や昆虫、両生類、爬虫類などが暮らすようになり、かつては絶滅が危惧される希少な生き物もいるいい楽園でした。しかし、そこに人が放した外来種のアカミミガメなどがすみついて繁殖し、現在は在来種を脅かす汚染源になっています。

 2014年にここで市民が特定外来生物のカミツキガメを発見し、通報によって捕獲されました。解剖したところおなかに卵があり、もし繁殖したらかなりの数に増えてしまうということで、調査が始まりました。わなを仕掛けることでどんな生き物が生息しているかを把握すること、捕獲した外来生物は取り除いて、遊水地の環境をよくすることが狙いです。

 外来生物の駆除は、全国的に見ても業者に頼んでいる自治体が多いです。そうした中で、市民参加型のこうした取り組みを行うのはなぜでしょうか。

業者に依頼する外来種対策では、解決するまで継続できない

 例えば外来生物が1000匹いるときに、行政が年間100万円の予算をつけて1年に200匹捕ったとすると、費用に対する成果を表すことができます。でも、続けていけば数は減っていきますから、同じ100万円で仕上げの1、2匹を探し出して捕るという段階になると、やっぱり予算はつかなくなる。外来種対策は最後の1匹まで捕らないと、また数が増えて、それまでやったことが無駄になってしまいます。

   

 そもそも外来種駆除にかかる費用の出どころは税金です。このお金は本当だったら地域の子育てや福祉などに回せたもの。それを外来種のために使うというのは、地域の人にとって何もプラスになりません。

 業者任せでは、誰かがお金をもらってやる仕事、他人事という感覚になるうえ、解決するまで継続もできない。でも地域の人々が協力してボランティアでやれば、費用も安く済みます。

 今回の調査範囲は約30ヘクタールでしたが、これくらいの広さにわなを150個仕掛けるのを業者に頼んだ場合の費用は1回で約50万円です。一方で、地域の人たちの力を借りれば、わなに入れる餌代程度で5万円もかかりません。同じお金で、1回しかできないことが10回できるわけです。「うちはカメを飼ったことがないから関係ないよ」ではなく、たとえ誰かが飼っていて逃げたものでも、それをみんなでやるという意識が必要です。

7月に静岡市の麻機遊水地で行われた外来種の捕獲調査。まずはわなを自分で組み立てるところからスタート
7月に静岡市の麻機遊水地で行われた外来種の捕獲調査。まずはわなを自分で組み立てるところからスタート