普段経験できないわなを使った調査 子どもたちは結果を自由研究に

 調査は2日間にわたって行いました。初めに、なぜ外来生物を捕まえなくてはいけないかを皆さんにお話しします。よく、かわいい生き物、小さい生き物はいてもいいんじゃないか?と言われたりしますが、長い地球の歴史の中で、生き物は少しずつ自分の力で分散し、進化を遂げてきました。それを、自力では動けないところに人間がぽーんと移動させると、そこからまた進化がスタートしてしまう。本来あるべき生物の進化、生物の未来を人間が変えてしまうことになるのです。これはあってはならないこと。それをまず理解してもらいます。

 一般の方が調査活動に参加する面白さの一つとして、わなを扱えるということがあります。わなを仕掛けるには県への申請が必要で、通常は一般の人には許可が下りません。市がとりまとめて申請することで、特別に使うことができました。

 わなのカゴは各自で組み立てます。中に入れる餌も、私たちは臭いの強い魚のアラを用意しますが、練り餌やイカなど、持参したものを使ってもOK。わなの準備ができたら、池の中に沈めて設置完了です。どこにどんな生き物がいそうか、生き物の気持ちになって仕掛ける場所を選びます。

餌を入れたカゴを遊水地の中に仕掛ける。何がかかるかな?
餌を入れたカゴを遊水地の中に仕掛ける。何がかかるかな?

 カゴは翌日引き上げます。中を見てみると、たくさんカメが捕れている人もいれば、全然捕れていない人もいる。継続して参加してくれている方はスキルが向上し、捕れる数も年々増えていきます。うまくいかなかった人は、なぜ自分は捕れなかったのかを考えて、上手な人の技を盗んだりするわけです。子どもたちもカゴに何も入っていないとがっかりして、「なぜ捕まえられなかったの?」ということを私に聞いてきたりします。

 やっぱり、外から丸見えの所にわなを置いても生き物は入りません。道路のすぐ横は仕掛けるのは簡単ですが、生き物が集まるのは、人が近づきにくい、草の陰になっているような所。どんな餌を仕掛けて、どんな場所に置いたら、どんな生き物が捕れたか。子どもたちはそうしたことを夏休みの自由研究にすることができます。

 今年はアカミミガメ29匹、クサガメ84匹、ニホンイシガメ2匹、ニホンスッポン9匹を捕獲しました。駆除の対象となるアカミミガメは、調査開始年から少しずつ減ってきています。一方、在来種のニホンイシガメは最初の年は0でしたが、徐々に確認されるようになりました。今まで外来種に追いやられていたのでしょう。特に今年は初めて、性成熟に達したニホンイシガメのメスが含まれていました。少しずつですが、環境はいいほうに変わっています。

 増えたと言ってもこの通りわずかな数ですが、在来種がここまで危機的状況にあるということを、参加者に知ってもらうことができます。カミツキガメがわなにかからなかったのは、いてもまだごく少数で、繁殖はしていないからなのかもしれません。

2日目にすべてのわなを回収し、中身をチェック
2日目にすべてのわなを回収し、中身をチェック
アカミミガメについて解説する加藤先生
アカミミガメについて解説する加藤先生
在来種のニホンイシガメを2匹確認!
在来種のニホンイシガメを2匹確認!