アオダイショウは外来生物の侵入を抑える門番

 在来生物の中にも、外来生物を抑える力を持った生き物はいます。例えばアオダイショウといった日本の蛇はアカミミガメの赤ちゃんを食べてくれる。好き嫌いはあると思いますが、本当は30分歩いている間に3匹くらい蛇が見られるような環境だと、外来種の侵入や繁殖を抑えることができます。

 こういう話を小学校の環境教室などですると、子どもたちは賢くて、「アオダイショウが増えたら、日本のイシガメもいなくなっちゃうんじゃないの?」って言うんです。でもイシガメって、蛇が飲み込もうとするときに嫌がるよう、赤ちゃんのときは甲羅がギザギザしています。長い歴史の中、食うか食われるかの関係で、イシガメもある程度防御できるような性質を獲得できているんです。面白いですよね。アカミミガメは凶暴だけど、イシガメのような形質は持っていないので、アオダイショウよりは弱い。

 繰り返しになりますが、基本的に外来種が悪いから殺すのではなく、捨てたり、野外に放したりした人間が悪いのです。今起こっている問題は人間が引き起こしたもので、生き物は被害者です。

魅力的な外来生物を飼う楽しみが失われないために

 環境教室で子どもたちによく見せるのは、地元の静岡県内に捨てられていたアカミミガメやハリネズミです。どちらももともとはペット。あとは、1メートルを超えるオオトカゲも袋に入れて捨てられていたりします。それ自体がもう動物虐待です。オオトカゲも赤ちゃんのころはかわいいんですよ。でも大きくなるし、15年くらい生きる。引っ越しや結婚などで自分の事情を優先して、今までかわいがっていた生き物が邪魔になるということです。だったら最初から別の生き物を飼えばいいんです。

 日本人のモラルがどんどん低下していくようであれば、今まで自由に飼えた魅力的な外来生物が輸入を禁止され、身近にいなくなってしまいます。生き物を飼うのはむしろいいこと。野生生物と、私たちが飼う愛玩動物はしっかり線引きして、飼ったものは最後まで責任をもって面倒を見ることが大事です。

 ペットとして人気があることからも分かるように、外来生物は全体的に大きくて華やかです。対して、在来生物は色も形も比較的地味。地味なのは、目立っていたら食べられてしまうので、狭い島国の中で生き残るためでもあります。

 大陸の生き物が派手なのは、過酷な環境でどうせ敵に食われてしまうのだから、その前にバンバン繁殖しようというしくみなんですね。オスが一生懸命派手にするのは、メスを引きつけるため。敵にも見つかりやすくなりますが、地味でメスに興味を持ってもらえないよりはいいというわけです。

鮮やかな色と恐竜のような造形が魅力的なグリーンイグアナ。沖縄県の石垣島では1990年代に飼育されていた個体が逃げ出したのをきっかけに繁殖が続き、生態系への影響が懸念されている(写真提供:加藤英明)
鮮やかな色と恐竜のような造形が魅力的なグリーンイグアナ。沖縄県の石垣島では1990年代に飼育されていた個体が逃げ出したのをきっかけに繁殖が続き、生態系への影響が懸念されている(写真提供:加藤英明)