子どものころから生き物の不思議に魅せられていた加藤先生は、身近な自然に目を向けていたことで、大人になってから「外来生物が増えたな」という変化に気づくことができたといいます。自然環境が大きく変化するサイクルは実に50年という長さ。悪化してしまった生態系を少しでもよい方向に変えていくために、私たちに今できることは何でしょうか。

今、子どもたちが見ている自然が、20年後にどうなっているか

 私は静岡で生まれ育ち、小さなころはよく川で魚捕りをしたりしていました。生き物はどれも好きですが、一番魅力を感じているのは爬虫類です。恐竜に近いし、造形としてかっこいい。それに、例えばトカゲはしっぽが切れたら生えてきますよね。何でだろうって不思議でした。夏休みの自由研究か何かで、切れたしっぽが生えて元通りになるまでどれくらいかかるか、毎日測ったりしていました。そうやって、知らないことが調べていくうちにだんだん分かってくるのが面白かったです。

 今みたいにインターネットもないし、情報量も多くないので、不思議だと思うことは本でしか知ることができません。でも本に書いてあることは難しいし、学校の先生に聞いてみても、先生は基本的に教科書の範囲内のことしか教えられなかったりする。それで、自分で調べるようになりました。

 大学生になって興味のある生き物や水辺の様子を見たときに、外来種が多いなと気づきました。誰かがこの問題に取り組むだろうと思っていたら、誰もやらない。じゃあ現状を調べてみようというところから、私の研究活動は始まりました。

 小さいころに生き物を見ていたから、大学生になって、前とは環境が違うという危機感が持てました。だから、子どものころに生き物に興味を持って積極的に関わることは、違いに気づくためにとても大事なんです。今の子どもたちが見た自然が10年後、20年後にどうなっているか。「昔は外国の生き物がいっぱいいたけど、今はいないね」というようになっていたほうがいいですよね。自然環境は、大体50年くらいのスパンで大きく変わります。逆に言うと、元に戻すのにも50年かかるということです。

 高度成長期に日本は発展優先で環境を破壊して、生き物の数がどんどん減りました。そうやって在来生物が弱っているときに、外来生物は入り込みやすかった。野外に放したのも人間だし、それが増えやすい環境をつくったのも人間です。

 本当は早く日本の生き物を増やしたいけれど、今自然環境をよくすると、外来生物のほうが増えてしまいます。だから、まずは外来生物を積極的に取り除かなくてはいけないんです。