「爬虫類ハンター」こと静岡大学の加藤英明先生は、日本の生態系に影響を及ぼす外来生物の問題に長年取り組み、子どものころから身近な自然環境に関心を持つことが大切だと強調します。人と自然がこれまでどのように関わってきたのか、その変化を知ることができるものの一つが池です。

 池に外来種の魚がいたら問題なのでしょうか? いいえ、そうとは限りません。この記事を読んだ後、ぜひ親子で池のある公園に出かけて、どんな生き物がいるか観察してみてください。

大自然の中でブラックバスを釣るのは楽しいけれど…

 前回は、ペットとして気軽に飼われた外来生物のアカミミガメが池や川に大量に放され、全国で800万匹にまで増えているということを紹介しました。同様のパターンでもう一つ挙げられるのが熱帯魚です。グッピーやアロワナなど、見た目も華やかで観賞用にはとてもいいですが、やはり途中で面倒を見きれなくなり、野外に放されることがあります。

 観賞用以外に、釣りなどのレジャー目的でも様々な外来種の魚が日本に入ってきています。日本の小さなタナゴやフナを釣るよりも、外国産の大きなライギョやブラックバスを釣るほうが楽しいということですよね。これも、閉鎖的な釣り堀の環境で楽しむぶんには何の問題もありません。でも釣り人の心理として、大自然の開放的な環境で釣るほうが、魚も大きくなるしもっと楽しいと考えてしまう。そうして野外に放流されたことが、生態系に影響を及ぼす結果になっています。

農業用水確保が目的だったため池、今はゲームフィッシングの場に

 大事なのは、自然を保護する場所とレジャー目的で利用する場所をきちんと分けることです。例えば池はもともと人工のものです。農業用の水の確保を目的として全国各地にため池がつくられ、そこには在来種のトンボなどが来ていました。また、食用の魚をそこに入れて、大きくなったら捕って食べるという使われ方もしました。しかし、フナやコイを食べる人は減り、田んぼもバルブを開け閉めして水を引ける時代になった。そこでため池は、外来種の魚を放してゲームフィッシングを楽しむ場所に変わっていったりしています。

 本来の目的では使われなくなった池を、在来の生き物が集まる昔ながらの自然環境として残しておきたいのか、それとも有料で釣りができたり、外国産のコイを放して、餌やりが楽しめるようにしたりするのか。その池だけに外来生物を放すのであればいいのかもしれないし、餌のパンの売り上げが、池や池のある公園の維持管理につながるかもしれません。

 池をどちらの方向で利用したいのかを地域内で明確にしておかないと、考え方が異なる人の間で摩擦が生じます。在来種を守りたいという人が意見を押し通して外来種を駆除したとしても、レジャー利用派の人がまたぽんと外来種を入れたら、それでおしまいです。

 各地の水抜きに参加してみると、最近は在来の生き物が増えてほしいという要望が多いですね。池の水抜きも、最初は「抜いたらどうなっているんだろう?」という興味が大きかったんだと思いますが、今は水を抜いた後の管理をしっかりすることや、「どんな池にしたいのか」ということも地域で考えられているようになってきています。