都会で暮らしていると、子どもが自然や生き物に触れる機会がなかなかない……そんなふうに感じている人も多いのではないでしょうか。「身近な自然のことを知るには、まずは池や川に注目して、水辺の生き物に興味を持ってもらえれば」。そう話すのは、生物学の専門家として静岡県を拠点に地域の環境保全に取り組み、バラエティー番組などでも活躍する静岡大学講師の加藤英明先生です。

 この連載では、都市部で見られる生き物のことや、生態系に起きている変化、その原因となっている生き物と人間との関わりについてお話を聞いていきます。内容をぜひお子さんにも伝えてあげてください。

都市部の池や川で増えている「外来生物」って?

 テレビ東京の「池の水ぜんぶ抜く」という番組で昨年、横浜市の徳生公園で水抜きをしました。普段からごく当たり前にある池ですが、水を抜くことで中の環境が分かるということで、大人から子どもまで、地元の方が2000人くらい集まりました。皆さん身近な自然に興味はあるんですよね。ただ学ぶ機会となると、あまり多くないのかもしれません。この連載では、都会生活でも生き物の世界のことを学べる、池や川といった水辺で起きている変化についてお伝えしていきたいと思います。

 皆さんの家の近くにある川や池には、生き物はいますか? いるとしたら、それはどんな生き物でしょうか? 今、都市部の生態系で起こっている大きな変化として、外来生物の問題があります。ここ数年メディアで取り上げられる機会もぐっと多くなったので、外来種や外来生物といった言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

 外来生物というのは、もともとそこにはいなかったのに、海外など別の場所から持ち込まれた生き物のこと。アカミミガメ、カミツキガメ、ブルーギル、ウシガエル、アメリカザリガニ……。都会の川や池に多数の外来生物がいることが、大きな問題となっています。

 外来生物に対し、昔から日本にいる生き物のことを在来生物といいます。イシガメ、メダカ、トノサマガエル、テナガエビなどがそうです。生き物には相手を駆逐して上に立とうとする性質があるので、ある生き物が増えればそれを捕食する生き物が増えます。一時的な波はあっても、在来生物の世界はそうやってバランスが保たれ、生き物は進化し、生態系が形成されてきました。そこにまるで違う環境で生きていた外来生物が放されたら、それまでのバランスが崩れてしまいます。生き物に罪はなくても、取り除かなければならないんですね。

 ちなみにもともといなかった生き物でも、自分の力で外からやってきた生き物は外来生物とは言いません。例えばツバメは台湾やフィリピンから飛んできますよね。こういう渡り鳥は在来生物扱いで、取り除く対象とはしません。移動する力を身に付けたものが侵略していくのが、生き物の世界の摂理だからです。