「外来種=悪」は間違ったイメージ

 最近は、カミツキガメといえば「凶暴なんでしょ?」っていうように、外国から持ち込まれて野外に繁殖してしまっている生き物がいるということが一般にも知られるようになってきました。外来種の問題に関心が高まっているのはいいことですが、それによって「外来種=悪いもの」というイメージが先行しています。でも、これは正しくありません。例えば動物園にいるのはすべて外来生物です。パンダやキリンを「悪いやつだ!」って言う人はいませんよね。外国産のクワガタを家で飼っていたとしても、全く悪いことではありません。

 動物園の動物たちは見る人の心を癒やし、生き物の生態を学ぶ機会を子どもたちに提供してくれます。生き物を飼うことは、命を死ぬまで大事に扱う責任能力を高めることにつながります。外来生物は「きちんと管理しないこと」が問題なのです。では、なぜ管理されるべき外来生物が、野外でたくさん見られるようになったのでしょうか。

ペットとして輸入されたアカミミガメが、今や野外に800万匹!

 池の水抜きなどで大量に見つかっているアカミミガメは、ミドリガメという通称で1950年代後半からペットとしてアメリカから輸入されるようになりました。アジアではカメは勤勉、我慢強い、長寿などプラスのイメージがあって、悪く思う人がいません。子ガメは体長数センチと、姿かたちも愛らしい。値段も安く、衝動買いしやすいんです。縁日などで目にした子どもが「欲しい!」と言うと、犬や猫は飼えなくても、「カメくらいなら」と親も気軽に許します。

 でも、犬や猫の寿命は15年前後、長くて20年程度ですが、カメは40~50年生きます。最初は面倒を見られても、大人になれば仕事を持って、家庭を持ってと生活が大きく変わっていく。それに小さくてかわいいと思っていたカメも、どんどん大きくなります。そうした中で、最後まできちんと飼えるのか、本当はカメを買う時点で考えておかなければいけないわけです。

 犬や猫ならしつけの本を買い、家族できちんと話し合って家に迎えるのに、カメはお年玉をもらってパッと買いに行くような、玩具的な扱いがされてきました。アカミミガメを買った多くの子どもがどうしたかというと、大体中学生ぐらいから勉強や部活が忙しくなって面倒を見るのが難しくなる。そこで親は「じゃあ、川に放してあげなさい」と言うわけです。狭いバケツの中でろくに水も替えてもらえないような環境に置くくらいなら、野外に放してあげたほうがカメのためにもいいという感覚です。

 人気がピークだった90年代半ばには年間100万匹のアカミミガメが日本に入ってきていました。寿命を考えればまだ十分生きています。もちろん今もきちんと面倒を見ている人もいるでしょうけれど、環境省では野外に放されたアカミミガメが約800万匹に上ると推計しています。

 アカミミガメの原産地には、ワニやアリゲーターガーといった凶暴な生き物がいます。そうした環境を生き延びてきたアカミミガメを抑える生き物が、日本にはいません。全国各地の川でアカミミガメが在来種のカメを圧倒し、生態系に深刻な影響が出ています。

全国で大量に捨てられているアカミミガメ。赤ちゃんのころは手のひらサイズだったものが、成長すると体長約28センチの大きさに(写真提供:加藤英明)
全国で大量に捨てられているアカミミガメ。赤ちゃんのころは手のひらサイズだったものが、成長すると体長約28センチの大きさに(写真提供:加藤英明)