小学3年生は「ギャングエイジ」と呼ばれるように子ども同士の仲間意識が強くなり、親や先生といった絶対的な存在への依存から抜け出し、少しずつ自立していく時期。学校生活にも学童保育にも慣れてきた安心感から、親も目を離しがちになります。しかし、多くの犯罪を分析し、犯罪者の育ち方も研究してきた清永奈穂さんによると、この小3という学年が、子どもの将来への分岐点となるのだそうです。親は子どもとどう向き合っていけばいいのか、清永さんに聞きました。

非行を5回以上繰り返した少年の半数が、成人後に犯罪を起こしてしまっている

 改正前の旧少年法を基に、過去に罪を犯して捕まった少年を調査したところによると、14歳から19歳の間に5回以上非行を繰り返した少年のうち、その半数が20歳から24歳までの間に犯罪者として一度は警察に捕まっています(元警察庁科学警察研究所・清永賢二氏調べ)。

 この少年たちの非行は、強姦、薬物乱用、暴走などの悪質な犯罪以外に「ついちょっと」という自転車盗なども含みます。「ちょっと」の非行も繰り返してゆくうちに大人になって犯罪者となってしまう危険が高いのです

 ここで問題なのは、5回非行を繰り返す少年の過去を辿ると、小学3年生の前後に、非行まで行かなくとも様々な「ちょっとした」反社会的な行いで警察に補導された少年が多くを占めていることです。小学3年までに将来の犯罪者の芽が生まれ、中学から先へ進み非行を繰り返していくうちに、大人の犯罪者になってしまうのです。

非行を予防するには親の向き合い方が大切

 では、なぜ非行に走る子どもが出てくるのか。犯罪者の過去を遡り、その原因を探っていくと、最初の段階として幼児期の5歳くらいのときに、親としっかり向き合っていなかったという傾向があります。

 親と子どもとしっかり向き合うというのは、ただ単にいつも一緒にいて子どもを甘やかすことではありません。大事な話を聞くときはしっかり耳を傾け、守るべき約束は守る。このようなことが親と子の双方でできているかということなのです。

 もしも、これまでにきちんと向き合えている自信がなくても、小学生になってからでも、中学生になってからでも、間に合います。気付いた時点でやり直せばよいのです。

 忙しくて、子どもと向き合えないことがあったとしても、必要以上に気にしなくて大丈夫です。量より質です。ときどきでも、子どもと大事な話をするときは、目を合わせて会話するようにしましょう。

 子どもが親に話を聞いてほしいというそぶりがあるときは、できるだけ「背中で話さない」ことも大事です。お互いに顔を合わせて話を聞いてあげてください。子どもは表現できない言葉を目で語ります。親が自分の顔を見てくれて、向き合ってくれていると伝われば、普段子どもにとって話しづらいことも話すようになるはずです。

わが子の「何かあったかも!?」をキャッチしよう

 非行に限らず、いじめられていたり、不審者に遭遇したなど、子どもの危機は早い段階で察知したいものです。しかし、子どもは学校で誰かに意地悪をされたり、帰り道に知らない人に声をかけられたことなどがあっても、親にそのことを話すとは限りません。私たちの調査では危ない目に遭った子どもたちのうち、家族にそのことを話した子どもは41%に留まっています。友達に話した子は38%。誰にも言わなかった子も25%います。

 つまり、親に話さなかった子どもが約6割もいて、4人に1人は誰にも話をしていないのです