内閣府が発表している平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査によると、小学生のスマートフォン所有率は29.4%、中学生では58.1%という数字になっています。今の子どもたちはデジタルネーティブです。でも、だからといって生まれながらにリテラシーが高いわけではありません。親が知らない間に見知らぬ人とつながり、トラブルに巻き込まれてしまう……。親がフィルターをかけるなどしていくら物理的に抑止をしても、つながることを防げない今、大人は何をしていくべきなのか、清永奈穂先生にお話を聞きました。

SNSで出会った見知らぬ人に会ってもいいと思っている子どもは47.4%

 小学校4年生から高校生までを対象にしたデジタルアーツの調査によると、ネット上で知り合った友達と「会ってみたい」または「会ったことがある」と回答したのは、子ども全体で47.4%に上ることが分かりました。4~6年生の小学生男子では57.9%、4~6年生の小学生女子では33.3%という数字になり、見知らぬ人とつながることに対しての警戒心の低さが垣間見られます。子どもたちはなぜ他人とつながりたがるのでしょうか。

 「どこにでもいるふつうの子どもたちの心の隙間にヒントがあります」と清永さん。

 心の隙間とは、

・成績に悩みがある
友達はいるけれど、どこか満たされない
・仲間に入りきれない
誰にも本音を言えない
・自分に自信がない

など、現実世界での悩みです。ところが、リアルな世界では本当のことを言いにくいと感じている子どもも、会ったことのない他人になら安易に自分をさらけ出すことができてしまう。そんな傾向があり、「子どもたちは万が一傷ついたとしても『アカウントを消せば大丈夫』『名前を変えれば平気』と考えています。その気楽さからネットで知り合った他人といとも簡単につながり、深い悩みまで吐露してしまうのです」

悪意を持った人は巧みな手口で近づいてくる

 もちろん、ネット上の出会いがすべて悪いわけではありません。

 「怖いのは、悪意を持った大人が子どもたちの心の隙間を狙い、巧みに近づいてくることです。例えばSNSを使った最近の事例としては、次のようなものがあります」

・SNSで知り合った小5の女児を誘拐した。犯人は「家出をしたい」という女児の書き込みを見て、手助けしたかったと供述している。
・SNSで知り合った神奈川県の小6女児に交際を匂わせ、みだらな行為を繰り返したとして、愛知県の20代の男が逮捕された。

 清永さんによると、その手口は、主に次のふたつだそう。

・性別や年齢を偽り、親近感を持ちやすい印象を与えながら近づいてくる。
・何の危害も与えない相談相手や趣味を共有できる仲間だと思わせ、優しい仮面をかぶって接近し、突然脅迫するなど急変する。

 「悪意を持って子どもに近づこうとしている人にとって、SNSは非常に効率のいいツールです。これまでの連載で、連れ去りなどをたくらんでいる怪しい人は必ず現地を下見しますとお伝えしました。この際、実際の連れ去りに向けて地図アプリを活用する犯罪者もいます」

 「こうした人たちは、下見をしたうえで、接近しやすく、逃走経路も確保され、直感的に良いと思えば、今だ!のタイミングで犯行を遂行します。インターネットも同様に、その子どもの投稿等を確認して下見をします。興味を引く話題をちらつかせながら、優しく接近し、いつの間にか情報を巧みに吸い上げ、いつの間にか「写真を送らねばならない状況」や「会わざるを得ない状況」に子どもを追い込みます」

 「ネット上で声をかければ、路上のように周りの人に怪しまれるリスクがありません。子どもが自分から近づいてくることすらあるので、犯罪者にとってはとても合理的なツールなのです」と清永さん。

 ネットの世界で相談相手として会話を重ねるうち、誰にも怪しまれないまま、どんどん親しくなってしまうのです。そして、ある日、突然、現実世界で子どもの前に現れ、犯行に及ぶ。そんな「ステルス型」の犯罪が増えているといいます。

 「保護者が事態に気づいたときには深刻度が増しているケースが多くなっています」というから、子どもがどんな人とつながり、どんな内容を交わしているかはぜひ、把握しておくべきでしょう。

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