2018年4月、新潟県新潟市の小2の女の子が1人で下校中に自宅付近で行方不明になり、遺体がJR越後線の線路に遺棄された事件は、子どもを持つ日本中の親を震撼させました。わいせつ目的の誘拐未遂など子どもを狙った犯罪は後を絶ちません。親をはじめとする大人がスクラムを組み、この地域の子どもを一人も被害者にさせない。その強い意志をもって、子どもを守るためにはどうすればいいのでしょうか。
 「いたずらにこわがるのではなく、まず悪いことをしようとする人の気質や心理、行動を知ってください」。清永奈穂さんはそう話します。そこで「親子で知りたい防犯教室」第2回は、子どもを狙う人はどんな人なのか、また、犯罪者の心理状態、行動のパターンについて話を聞きました。

子どもを狙う犯罪者は犯行時におびえている

 「子どもを狙う者をはじめとする犯罪者は、実行にうつすときには『捕まらないだろうか』『失敗しないだろうか』という気持ちが隣り合わせにあり、実はおびえていることがほとんどです。大人のみなさんはまずこの心理を覚えておいてください」。清永さんはそう言います。

犯罪者の気質:6つの一般的特徴
(1)いかなる犯罪者でも犯行時はおびえている
(2)プロになるほど高い知能・技術・豊富な情報をもっている(常時学習)
(3)高い偏執性・妄想性
(4)社会や周辺への強い被害意識ー復讐心
(5)巧みな自己弁護ー強い中和の精神
(6)あきらめ悪く、隙あれば何度でも繰り返し襲い、みえはり

 「文部科学省「質の高い教員養成GP研究」(日本女子大学清永研究室)での元犯罪者261名への調査分析と実際に路上で元犯罪者と行った実験から、(1)犯罪者はターゲットから20m離れたところから狙っている、(2)犯罪者は20m追いかけてもターゲットに追い付かなければあきらめるということが分かったそうです。

 「犯罪者は走り始めの4mまでは最初の『やる気』が続きますが、8mを過ぎると『無理かな』という気持ちが生じ、さらに10mを超えると『がくっ』とやる気が落ち、16m前後で『駄目かな?』と思い、20mで完全にあきらめます。つまり、20m先まで逃げることが必要になります。犯罪者は、ターゲットを追いかけていくうちに『誰かに見つかって捕まるのではないか』という心理が働いてくる、その気持ちになる20mまで一生懸命走ること。逆に言うと、どこまでも走らなければならないのかと、子どもたちに最初から逃げることをあきらめさせないためにもこの距離は教えてあげてほしいのです

図考案・作成/ステップ総合研究所
図考案・作成/ステップ総合研究所

危ないと思ったら、声を出す、抵抗する、逃げる

 また、ランドセルを背負っている場合は犯罪者の6m手前から、何も持っていない場合でも4m手前から走り出さなければ、20m逃げ切れないことも実験からわかりました。いずれにせよ、犯罪者の手が届く直前に逃げ始めたのでは、もう遅いのです。

 「ですから、まずは20m前先をしっかり見て歩く。そして、危ないと思ったら、すぐに逃げることが大事です。お子さんにいざという時は、かばんを捨ててでも逃げていいと教えてあげてください」と清永さん。「それからもう一つ教えてほしいことがあります」