瞬間ボランティアとして子どもと街に目を配る

 「共働きをしていると日中のパトロールは難しいかもしれません。でも瞬間ボランティアという方法があります。通勤途中や学童・保育園の送迎時、買い物の行き帰りなどに、街に変わったことが起きていないか、アンテナを立ててみてください。困っていそうな子、遅い時間に街を歩いている子がいたらちょっと声をかける。怪しい人がいたら、安全な距離を確保したうえで、二度見するだけでも、効果はあります」

 「もしも気になることがあれば、地域やPTAで共有しましょう。緊急性があると思ったら110番、そこまでではないかもと思ったら地域の警察署や♯9110番(生活の安全に関する不安等の警察の相談窓口)に連絡するとよいでしょう」と清永さん。

 実は清永さんの身近でもこの瞬間ボランティアで、連れ去り事件を防ぐことができたことがあったのだそう。

 「コンビニへ行く途中の女の子が車に乗った男性に声をかけられ、連れ込まれそうになるという事案がありました。近くにいた近所の人が不審に思い、女の子に『その人、知り合い?』と声をかけたところ、男性は車に乗り込んで、そのまま走り去り、事なきを得たのです。まさに瞬間ボランティアのナイスプレーでした」

 この話にはさらに続きがあります。「女の子から話を聞いた保護者は警察に通報したのですが、女の子はこの不審者の靴の色を見ていました。その靴の色が手掛かりとなり、不審者を特定することができたのです。被害を知ったらすぐに通報する、子どもから情報を聞き出すことも大切です

 瞬間ボランティアの場合も、見るべきポイントは安全パトロールと同じです。「夕方から夜の場合は、学童クラブや塾帰りの子が外にいる時間です。自分の子でなくても、一人で歩いている子がいたら、よく注意してあげてください」と清永さん。

 「PTAがパトロールを行う一番のメリットは、地域の中でそれを次の世代に引き継いでいけることです。子どもたちが学校を卒業した後も、ぜひ、瞬間ボランティアとして地域に目を配ってあげてください。それが地域全体を犯罪から守ることにつながっていくでしょう」

●困っている子、困っていることに陥りそうな子には
・一人で歩いている子がいたら、「気を付けて帰ってね」とひと声かける
・その子の姿が見えなくなるまで目を掛け、見守る
・怪しい人にじっと見つめられている子がいたら「気を付けてね」と声をかける
・怪しい人物がいなくなるまで子どもを見守る

次回は「子どもを守るためには犯罪者を知ること」をお届けします。

(取材・文/小山まゆみ 構成/日経DUAL編集部 福本千秋 撮影/花井智子)

清永奈穂
ステップ総合研究所所長・NPO法人体験型安全教育支援機構代表理事
清永奈穂 元警察庁科学警察研究所犯罪予防研究室長でステップ総合研究所特別顧問の清永賢二氏と共に、犯罪やいじめ、災害からどうやって命を守るかを研究している。子どもが犯罪に巻き込まれた現場に足を運んだり、元犯罪者に話を聞くなどして犯罪がどのように起きたか、どうしたら防げるかを科学的に検証し、全国で行う体験型安全教育に反映させている。海外の安全教育についても詳しい。家庭では一男一女の母。著書に『犯罪からの子どもの安全を科学する―「安全基礎体力」づくりをめざして』(共著・ミネルヴァ書房)など。ステップ総合研究所