小学校や中学校受験をせず、公立中学に進学した場合、その後に待ち受けるのが高校選び。もしかしたら今の日経DUAL読者の皆さんが中学生のころは、成績(偏差値)が進路選びの最大の選択基準になっていたかもしれませんし、高校選びも有名大学への進学率に左右されることが多かったかもしれません。

 一方、この数年「都立復権」などと言われていた東京都では、2018年の入試で私学希望者が増加。背景には実質上の「私立高校の授業料無償化」がありますが、生徒にしてみれば選択肢が広がったともいえ、高校側は教育内容をはじめ、より個性が求められるようになってきています。

 今回取材したのは、「学校の中であえて、マイノリティーの立場に立つことを選んで来る生徒が多い」という国際基督教大学高校(ICU高校)です。もともとは海外からの帰国生徒のために創立されただけに、今も生徒の3分の2が帰国子女で、一般の生徒はそれを分かったうえで受験するというのです。今注目される高校情報と共に、ICU高校の中村一郎校長自身の体験を交えた「あえて中学受験をしない進路選び」をお届けします。

【中学受験をしない選択を考えたときの子どもの進路選び特集】
第1回 「みんな受験するから私も」では考える力が育たない
第2回 小学校の学区選びは高校受験まで影響する
第3回 実はラクではない高校受験 突破力の鍵は小学生時代
第4回 本物のグローバル人材は公立中から生まれる!?
第5回 “自分はエリートだ”と子が思う環境を与えていないか ←今回はココ

出身高校が出身大学より重要になる?

 今の公立小学校や公立中学校に通うと、「子どもが地域社会の中で成長できる」「自分で何とかする力が付く」「国際化が進んでいる面からも、日本人のなかにも様々なバックグラウンドを持つ子どもが集まる面からも、多様性を学べる」ということが、これまでの特集で明らかになってきました。こうした公立校で育んだ自主・自律・探究の心を、さらに伸ばすためにも、中学卒業後の進路選びは重要になってくるでしょう。

 もしかしたら海外のボーディングスクール(寮制学校)に進学する子、あえて卒業後すぐに役立つ知識を得たいと高等専修学校を希望する子もいるかもしれません。とはいえ現状では、一般的な高校への進学を望む子が多いとされています。

 では今、受験するならどんな高校がいいのでしょうか。

 例えば、「企業に選ばれる人材を輩出する高校」というのも一つの基準になるでしょう。2018年3月19日号の『日経ビジネス』の特集「大事なのは高校」では、大学の画一化と高校の多様化により、人材を見抜く鍵は出身高校だという声が高まっていると分析。名門大学への進学率より「産業界で特に枯渇している7種の人材」の卵を育成する、「異才を数多く輩出する高校」に着目していました。

 その一つが大阪府立箕面高等学校。教育方針に「真のリーダー育成『和親協力』」「自ら考え戦略的に実行する力の育成『自主自律』」「グローバル人材の育成」を掲げるこの高校には、グローバル科があり、海外難関校に進学する生徒が出ているそう。

 実は箕面高校が躍進したのはごく最近のこと。大阪府で始まった校長の民間公募制で、日野田直彦・元校長が就任してからだといいますが、こうした「高校教育の改革」は文部科学省の働きかけもあって進んでおり、特に近年は個性的な魅力ある高校が増えてきています。

<次のページからの内容>
● 日比谷、国際、多摩科学技術…都立でも個性が出る学校経営計画
● 「国際学科」と「国際バカロレアコース」を設けている都立高
● 「スーパーサイエンスハイスクール」の認定を受けた都立高
● 「本人が何をしたいか」を踏まえたうえで情報収集を
● あえて、マイノリティーの立場を選ぶということ
● 物差しが一つではない環境
● “君は特別な人間だ”という過度なメッセージは送るべきではない
● 中学生は「私」を突き詰めきれていない段階