特集1回目で「公立小学校や公立中学校育ちの良さには、子どもが地域社会の中で成長できるという面がある。また、自分で何とかする力が付く」と公立校に通うメリットをお話された安田教育研究所の安田 理さん。あえて高校まで受験をせずに小・中学校で過ごすことで身に付く能力が、他にもあると言います。引き続き、安田さんにお話を聞きました。

【中学受験をしない選択を考えたときの子どもの進路選び特集】
第1回 「みんな受験するから私も」では考える力が育たない
第2回 小学校の学区選びは高校受験まで影響する
第3回 実はラクではない高校受験 突破力の鍵は小学生時代
第4回 本物のグローバル人材は公立中から生まれる ←今回はココ
第5回 “自分はエリートだ”と子が思う環境を与えていないか

公立中がインターナショナルスクール化!?

 地域社会とのつながりを築きやすく、またいい意味で手をかけられすぎないからこそ自分で何とかする力が付く環境があるのが公立中学の良さと指摘する安田教育研究所の安田 理さん。

 改めて「公立校の良さ」を質問すると、「多様性に富んでいる」点だと言います。

 「例えば以前、私は港区立六本木中学校で学校評議員を務めていましたが、クラスの生徒33人のうち半数の姓か名のいずれかが日本語名ではないという状況でした。ある意味、公立中がインターナショナルスクール化しているわけです」

 母語が日本語ではない生徒がいると、言葉が通じない状況にもなるでしょう。

 「それだけでなく、常識も、習慣も異なりますし、場合によってはいざこざも起こります」。とはいえそれこそがグローバル化社会だと安田さん。

 グローバル化とは、ヒト・モノ・カネ・サービス・情報などが国家や地域などの境界を越え、地球規模で相互に移動したり、関係し合ったりしている現象をいいますが、それが学校という同年代の子どもたちが集まる中で、体感できるというわけです。

 「バックグラウンドの異なる生徒たちが一緒に行事をやったり、学校生活を送ったりしていくと、これからの必要な力が付くと思います。例えばどうコミュニケーションをとるのかということもその一つ」と安田さん。

 言葉で正確に伝わらないことが分かると、子どもたちは身振り、手振り、アイコンタクトから始めようとするなど、ベーシックなコミュニケーション力が自然に付いてくると言います。また、「この子がこういう行動を取るのは、もしかしたら育ってきた背景が違うからかもしれない」などと、相手の状況を考える力も付くとも。

 「相手のことを考えられるというのはすごく大事な能力です。“当たり前”が通用しない環境だからこそ育まれるものですし、均質化している私立と違う最大の良さですよね」

<次のページからの内容>
● 公立校では様々な境遇の子どもがそろいやすいのが利点
● 社会に出てから重要なのは、人の財布を開けさせる力
● 一企業、一業種で一生を終えられない時代に
● 今後求められるのは知識、教養、語学力、そして人間力
● グローバル化に対応する国際力は、アジア圏で育む