わが子には学びの楽しさを知って、主体的に学ぶ姿勢を身に付けてほしい。でも、小学校時代は中学受験の勉強をさせずに、できる限りのびのびと遊ばせてあげたい。となると、多くの子どもたちに待っているのが高校受験です。高校受験は中学受験とどのような点が異なるのでしょうか。まだ保育園、小学生のデュアル世代の子どもたちに今からできることはあるのでしょうか。高校受験指導のエキスパートである市進学院高校受験指導室室長の濱砂貴真さんにお話をお聞きしました。

【中学受験をしない選択を考えたときの子どもの進路選び特集】
第1回 「みんな受験するから私も」では考える力が育たない
第2回 小学校の学区選びは高校受験まで影響する
第3回 実はラクではない高校受験 突破力の鍵は小学生時代 ←今回はココ
第4回 本物のグローバル人材は公立中から生まれる!?
第5回 “自分はエリートだ”と子が思う環境を与えていないか

高校受験で必要なのは自己管理力

 高校受験で第一志望に受かる子はどんなタイプですか?

 濱砂さんにまずお聞きしたのはこの質問です。

 東京をはじめ、千葉、神奈川の市進学院の教室で長年高校受験指導にあたってきた濱砂さんは、高校受験の厳しさや、それを経て子どもたちがどのように成長するかを見てきています。そのような濱砂さんは、高校受験で成功する子を「自己管理ができ、時間の使い方が上手な生徒です」と分析します。「というのも、公立中学の子どもはとても忙しいのです。たいていの子が部活に入っていたり、習い事をしながら、学校の勉強、塾通いもこなさなければなりません。となると、限られた時間の中で効率よく勉強することが求められるのですね。ここが、小学生の受験と違うところです」

 濱砂さんから見ると、「効率よく勉強している生徒は、自分なりにいつ、どのように勉強するかを決めています。定期テストから逆算して、計画を立てて、実行できていますね。私たちもそうしたアドバイスをしていますが、それを実行している生徒、していない生徒では大きな差が生まれてしまいます」

 「中学生といえども、まだ自分に甘くしてしまう時期です。嫌なことがあれば避けてしまうところも、なきにしもあらずです」。とはいえ、親が四六時中子どもを見張っているわけにはいきません。「だからこそ、小学生時代に学習習慣を付けておくことが必要になります」

高校入試は国語力で差がつく

 もう一つ、濱砂さんが強調するのは国語の重要性です。

 「最終的に学力が飛躍的に伸びていく子は、国語ができる生徒です

 「入試改革では英語の4技能が重視されるなどと言われていますから、もちろん英語力も大切です。しかしもっと先を見れば、仮に英語が話せなくても、AIが代わりに話してくれるようになるかもしれません。重要なのは、そこで何を話すかです。コミュニケーションの質を決定づけるのは母国語である国語の力なのです」

 濱砂さんによると国語ができる生徒は、最終的に、数学や理科、社会など他の教科も成績を伸ばしていけるのだそう。「国語ができる生徒には “読む力” があります。これは、一言一句、読み飛ばしなくきちんと読み取る力です。そして、読み取った情報を基に “考える力” もある。この両輪がそろっていることが、国語ができる生徒の特長です」

 「都立高校についてはトップ高は国語、数学、英語は自校で作成した問題を出題します。どの教科も難易度が高いのですが、国語は特に難しくなってきています」

 ところが国語はできる子とできない子の差が大きいのだそう。「国語で大きな差がついてしまうのが今の高校受験です」と濱砂さん。

 数学にしても、トップ校の入試問題は文章題でも条件が複雑で、問題文を読んで規則性を見つけ出すなど、国語力が必須となります。社会にしても、年号を覚えればいいというレベルではありません。提示された資料や実験結果を読み取り、そこから何が分かるかを自分の言葉で表現する力を要求されるのだそうです。語彙力と思考力、つまり国語の力がすべての教科で問われるということです

 では、そうした国語力を高めるにはどのようにすればよいのでしょうか。

<次のページからの内容>
● 幼児期からの読み聞かせ、学童期の読書習慣で国語力を育てよう
● 子どもにはオープンクエスチョンで話しかけて
● 家庭で語彙力を育てよう
● 勉強は始める時間とやる内容だけを決めればOK
● 私立高校の上位校受験は選択肢が限られる
● 中学受験? 高校受験? わが子のタイプを見て再考してみよう