新卒で働き始めていたら、既に10~20年ほどたっているDUAL世代。「人生100年時代」と言われ、勤労期間は長期化しています。そんな中、「働き続けるために、どんなスキルを身につければいい?」「子育て中は思い切ったキャリアチェンジがしにくい」などと悩んでいる人は多いかもしれません。そこで今回は「キャリア」について学ぶゼミを誌面開講します。

そもそも「キャリア」をどのように考えればいいのか、日々仕事をする上で何を大事にしたらいいのかなどについて、「東京大学 本郷テックガレージ」「東京大学産学協創推進本部 FoundX」でサイドプロジェクトやスタートアップを支援し、『成功する起業家は「居場所」を選ぶ』(日経BP)などの著書がある、馬田隆明さんに話を聞きました。馬田先生のゼミは今回が最終回です。

DUAL Specialゼミ 馬田隆明先生/全3回
(1) 30~40代のキャリアアップは「意義」がキーワード
(2) キャリアを成功に導く「居場所」の変え方
(3) 時間を「深化・探索・ゆとり」に最適に配分せよ ←今回はココ

キャリアとは時間を投資すること

日経DUAL編集部(以下、――) 日経DUAL読者は、仕事と子育てに忙殺されて「時間がない」という悩みも多いですが、キャリアアップのために「時間」をどのように使えるとよいでしょうか。

馬田先生(以下、敬称略) 私は、キャリアとは時間を投資することと同義だと考えています。その観点で紹介したいのが、米スタンフォード大学の社会学者で、ビジネススクールの教授でもあったジェームズ・マーチが1991年に発表した論文です。組織学習における知識の「探索」と「深化」という概念を発表しているのですが、新たな知識を「探索」することと、既存の知識を深掘りしていく「深化」、この両方が大事だと説いているのです。

 しかし多くの職場では、「探索」よりも「深化」に傾倒します。なぜなら、深化のほうが結果に直結しやすいからです。短期的にはそれでよくても、長期的に考えると、新しい可能性や選択肢をもたらしてくれる「探索」は非常に重要です。

 ただ、「深化」に比べると「探索」は効率が悪く、時間や労力という多くの資源をつぎ込んでも何も成果が上がらない場合が多々あります。

―― 確かに目の前のことを一生懸命取り組むあまり、仕事の幅を広げるということはおざなりになりがちです。

馬田 『両利きの経営 「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』(東洋経済新報社)を著したチャールズ・オライリーとマイケル・タッシュマンも、「深化と探索」の両方の重要性を唱えています。深化と探索をそれぞれ組織の観点で言えば、「深化がマネジメントの問題だとすると、探索は基本的にリーダーシップの問題」とまとめています。

馬田隆明さん
馬田隆明さん