「学校へ行くのが当たり前」、親はその常識を変えよう

奥地圭子さん。小学校の教諭を経て33年前に東京シューレを開設
奥地圭子さん。小学校の教諭を経て33年前に東京シューレを開設

 子どもが不登校になると、お母さんお父さん方は「子どもが学校を休んだら、ずっとこのまま家にいるのではないか」と不安でいっぱいになってしまうことと思います。

 子どもが学校を休んでいることをプラスに見るか、マイナスに見るか。これは子どもにとっては大きな違いがあります

 学校を休むのはダメと決めつけられて、なんとか学校に行かせようとさせられたら、子どもは苦しみます。苦しい期間を持った子は、外の世界に出るのが苦手になります。人が怖いですし、不安があり、自分に自信を持てないからです。

 アメリカやイギリスで盛んな教育方法に、ホームエデュケーションという学び方があります。学校ではなく家で学ぶやり方です。

 アメリカやイギリスでは1980年代にはホームエデュケーションの考え方が浸透していましたが、その頃の日本はまだ「学校に行けない自分はダメな子だ」「うちの子は学校に行かずに引きこもっている」、そういった時代でした。そのころから、私たちは世界の教育事情の調査を行い、そのときの経験をもとに、東京シューレでは1993年に家庭で学ぶ『ホームシューレ』を立ち上げました。

本棚には、教科書や学習書も並ぶ
本棚には、教科書や学習書も並ぶ

 私たち親の世代は、学校へ行くのが当たり前という価値観の中で育ってきました。その常識のせいで苦しんだ人もいるのではないでしょうか。今こそ、その常識を変えるときです。そうしないと子どもの気持ちに寄り添うことは難しくなります。親が学校に行くことにこだわっている間に、子どもは自信をなくし、自己肯定感を失っていきます。それは悪循環にしかなりません。

 学校へ行くことだけが学びの手段ではありません。学び方は多様です。育ち方も学び方も人それぞれでいいのです。

フリースペースでくつろぐ中高生の子どもたち
フリースペースでくつろぐ中高生の子どもたち
奥地 圭子
NPO法人東京シューレ理事長
氏名(しめい) 1941年生まれ。NPO法人東京シューレ理事長、NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク代表理事、NPO法人全国不登校新聞社代表理事、NPO法人フリースクール全国ネットワーク代表理事、学校法人東京シューレ学園学園長。1963年より22年間、東京、広島で公立小学校の教諭を務める。わが子の登校拒否から学び、親の会「登校拒否を考える会」を立ち上げたのち、教諭の職を退き、フリースクール「東京シューレ」を開設。登校拒否・不登校を考える全国ネットワークや全国不登校新聞の立ち上げにも尽力するなど、不登校支援について全国的な活動を展開している。

(取材・文/小山まゆみ 構成/日経DUAL編集部 福本千秋 撮影/花井智子)