子どもを自然に触れさせたいけど、都会ではなかなか難しい――。そんなふうに諦めてしまっていませんか。「都会の公園でも、道端の街路樹でも自然体験は可能です」。保育園などでネイチャープログラムを実施している長谷部雅一さんは言います。

 今回は、少し視点を変えて、自然体験をすることが、子どもの成長にどんなメリットがあるかについて教えてもらいます。

アスファルトの平坦なところでしか遊んでいない子は手が出ない

 これまで、大人が考え方やモードを変えれば、都会でも自然体験は可能ということをお話ししてきました。今回は、自然体験をすることのメリットについてお話しします。

 自然体験をすると、様々なメリットがあります。でも、「こんなメリットがあるからこの遊びをやらせよう」という大人の意図が透けて見えると、子どもは嫌がることが多いので、それは前面に出さないほうがいいでしょう。あくまでも遊びの主体は子どもです。ただ、結果としてどのようなメリットがあるかを親が知っておくのはよいことだと思います。

 まず身体的メリットについて。私は保育園や幼稚園などでネイチャープログラムを行っています。少し坂のある山で園児たちを初めて遊ばせると、見事にみんなバタバタと転びます。それも頭から転んだり、ケガをしそうな変な転び方をしたり。でもだんだん回数を重ねていくと、見ていて安心できる転び方に変わってきます。

 登り方にも注目すると興味深いです。アスファルトの平坦なところでしか遊んでいない子は、土の斜面を登らせると、手が出ないのです。急な斜面になると、手も使って登る発想になるのが普通ですが、そうなりません。普段から地面に手を着く必要のない生活をしているから仕方がないんですけどね

 自然の地面は、土が隆起していたり、石があったり、木の根っこが盛り上がっていたり、でこぼこしています。その上で歩いたり、走ったり、遊んだりすると、平らなアスファルトの上とは異なり、自然にボディーバランスを鍛えることになります。でこぼこの地面の上では、方向転換するときや、ジャンプからの着地の踏ん張り方などでも違う力を必要とされます。

 もし、近くに築山のような山や、土の斜面があったら、ぜひ斜面を使って追いかけっこしたり、鬼ごっこしたりしてみてください。体育館の中で鬼ごっこするより、体の使い方がだんだん上手になると思います。

 似たような例で、「座る」という行為を考えてみます。

自然の地面は、土が隆起していたり、石があったり、木の根っこが盛り上がっていたり、でこぼこしている
自然の地面は、土が隆起していたり、石があったり、木の根っこが盛り上がっていたり、でこぼこしている