満員電車で腕時計のガラスを傷つけた経験

 一方、白地の色を決めるのには時間を要したといいます。「ソーラーパネルを使用するため、色味によっては文字盤に透けて見えてしまいます。そのためソーラーでないクオーツ時計に比べるとデザインの自由度は低い。文字盤の色は時計の第一印象を左右するため『顔色』と呼ばれ、お客様が気にする重要なポイントでもあります。今回も透けて見えない白の中から販売面の意見も織り込んで色味を決めました」

 文字盤の脇に付いたりゅうずにも子どもが初めて使う「ファーストウオッチ」へのこだわりがあります。よくある溝がたくさんついた円形のものではなく、五角形のため操作性が高いのです。「大人用に比べて小さいため、面があるほうが回しやすい。とはいえ三角形では鋭角で肌に当たれば痛い。回しやすくかつ痛みもない五角形を採用しました」。りゅうずの形が五角形で、語呂が「合格」とも通じる縁起のよさも、中学受験を視野に入れた家庭にとっては購入の決め手になるかもしれません。

 スクールタイムの文字盤をカバーするガラスには光が反射しづらく時間を読みやすい無反射コーティングが施されています。セイコーウオッチとしては子ども用腕時計に無反射コーティングを施すのは極めて珍しいそうです。本格派にこだわった価格帯だからこそできたことだといいます。さらに、活発な子どもが傷つけてしまうことへの懸念もありました。伊東さん自身も「美大の受験生時代、予備校へ通う満員電車内で傷をつけてしまい、文字盤が見づらくなってしまった経験があっりました」。そこで、万一時計をぶつけてもガラスに直接当たらないようケースの縁をガラスよりも高くしたフレーム構造を採用しました。読みやすさに加え、傷つきにくさにも配慮したのです。