紆余曲折を経てたどり着いたオリジナルフォント

 「文字盤の数字のレイアウトやフォントを男女別にしようか」ーー。サイズが決まり、次の段階である文字盤のデザインでも紆余(うよ)曲折が待っていました。男女統一サイズにすると決めたことで、文字盤のデザインで男女差を出したほうがいいのではないか。この論議を解決するためにいくつものデザイン案を伊東さんたちは作成しました。

 「男の子はユニホームを意識したかっこいいカラーリング、女の子はナチュラルだったり文具デザインを参考にしたかわいさだったり。数字をすべて書くのではなく、一部を模様にしたり、大人の時計のように光る石を配したり模索しました」。だがここでも、視認性という最初のテーマに立ち戻ることで答えが導かあれました。装飾的になればなるほど時計としての「読みやすさ」を犠牲にしてしまうことが分かったのです。「ファーストウオッチには何より子どもたちが見やすいフレンドリーなデザインにしよう」と、原点に立ち返りました。

 最終的に採用したのは学校の壁によく掛けられているような、白地に黒い数字がすべてはっきりと書かれている見やすい時計をヒントにしたデザインでした。既存の時計に使っていたフォントには目指すデザインに適したものがなかったため、オリジナルのフォントを作成したそうです。「フレンドリーなフォントで、アウェー感を覚えやすい試験会場でも見慣れたものが手元にあれば少しでも気持ちが落ち着いて普段通りの実力が出せるのではと考えました」(開発担当の平吹奈央さん)。4つのカラーのうち、1つは黒地に白文字としたが、フォントは同じで見やすさは変わりません。

写真は「スクールタイム」。背景にある図版は、これまでのデザイン案
写真は「スクールタイム」。背景にある図版は、これまでのデザイン案