その土地や博物館のオリジナルキャラクターなどが目の前に現れて、史跡を案内してくれる――。そんなファンタジーのような世界が、いま実現しようとしている。利用する人を引き込み、これまで体験したことのない不思議な感覚を味わえる、リアルとバーチャルが融合した空間を演出する「空間音響MR (Space Sound Mixed Reality、以下SSMR)」だ。その裏側にある開発ストーリーをお届けする。

きっかけは観光に注目した「音」の活用

 「どうすれば子どもがもっと興味を持ってくれるのだろう」。歴史がある観光地、博物館や美術館で、子どもが無関心な様子を見ながらため息をついたことがある親は多いかもしれない。親がどんなに説明しても、読みやすそうな書籍や資料できっかけを作っても、子どもが興味を示すとは限らない。

 子どもが聞いているのかいないのか、面白がっているのかいないのか。NECが開発した音響定位技術と、映像AR(拡張現実)技術を組み合わせ、リアルとバーチャルが融合した世界を実現する「空間音響MR (Space Sound Mixed Reality、以下SSMR)」は、そんな親が抱えるモヤモヤを一掃する可能性を秘めたサービスだ。

 今年2月に香川県善通寺市で実証をし、2020年度中に47都道府県で1件以上の案件化を目指している。新型コロナウイルスの影響で歩みが遅くなっているが、落ち着いた時期には広まっていくであろうこのサービスを開発した、パパのストーリーをお伝えする。

リアルとバーチャルが融合した世界を実現する「空間音響MR (Space Sound Mixed Reality、以下SSMR)」を使った、香川県善通寺市での実証実験の様子。スマホで撮ると、バーチャル画面が現れる
リアルとバーチャルが融合した世界を実現する「空間音響MR (Space Sound Mixed Reality、以下SSMR)」を使った、香川県善通寺市での実証実験の様子。スマホで撮ると、バーチャル画面が現れる