妻への共感で夫婦コミュニケーションの質も変化

 一週間の時短勤務とワンオペ経験は、商品開発に役立っただけではなく、妻への理解を深めるきっかけにもなったと黒部さんは語る。

 「例えば、置いてある洗濯物の位置を少し動かしただけで怒る妻に対して、以前は『なぜこれくらいのことで怒るのだろう』と思っていたのですが、自分がすべての家事をやってみると、前後にやることとの動線を考えたベストの位置に洗濯物が置いてあるのだと納得できました。先の先まで見通して段取りをつけていることを乱されたくないという妻の気持ちを以前よりも察することができるようになったと思います」

 また、食器洗いなどの具体的な家事をこなすほかにも、夫としてできることがあるということも実感。夫婦のコミュニケーションを見直すことにつながったという。

 「ワンオペ生活を経験してみると、家事を分担してほしいという気持ちだけでなく、『この大変さを分かってほしい、共感してほしい』という気持ちが強く出てくることも感じました。以前はイライラしている妻に対して寛容になれない場面もあったのですが、『これくらいのことでもイライラしてしまうほど大変なんだよな』という受け止め方ができるようになったことで、夫婦のコミュニケーションの質が変わったように思います。時短勤務期間が終わったとき、妻には『一週間だけじゃなくて、これをずっと続けないと』と言われました。これからも体験を通して感じた共感を忘れず、妻の気持ちに寄り添えるように心掛けていきたいです」

取材・文/安永美穂 写真/鈴木愛子