学級崩壊、低学年の暴力、不登校、小1プロブレムなど、小学校には様々な問題があります。そうした問題に直面した場合、親はどうしたらいいのでしょうか。28年間小学校教員として勤務し、学級崩壊や小1プロブレムなどの現場に詳しい白梅学園大学子ども学部子ども学科教授の増田修治さんに聞きます。今回は、ちょっと視点を変えて、小学校入学前に焦点を当て、「入学までにやっておきたいこと」についてお伝えします。

「後伸びする子」に育てるためには幼児教育が重要

 「今、幼児教育に注目が集まっています」と増田さんは言います。

 「AIが台頭するこれからの世の中では、単純労働をする人材は求められません。では、どういう人材が求められるのかというと、知的好奇心が強く、創造力がある人。自分の持っている多様な知識をつないでクリエーティブに仕事に取り組める人間です」

 

 そうした人間を育てるためには、いわゆる「非認知能力」が重要だと増田さんは指摘します。「皆さんもご存じかもしれませんが、認知能力とは、学力テストやIQなどで測定することができる能力のこと。一方、非認知能力とは、自制心や、勤勉性、外向性、協調性などを指します。例えば『意欲ややる気を持って取り組める』『思いやりがある』『自分が疑問に思ったことを納得するまで調べることができる』『感情をコントロールできる』など。これらはテストなどでは測定できない能力です」

学力の高い子どもは、非認知能力が高い

 「日本財団が2017年11月に発表したリポート『家庭の経済格差と子どもの認知・非認知能力格差の関係分析』によると、生活保護世帯など貧困状態になると学力は低くなる傾向があり、特に小4以降で学力が低下する傾向があります。ただ、貧困世帯であっても学力が高い子どもはいます。貧困世帯で学力の高い子どもは、学力の低い子どもと比較すると、生活習慣や学習習慣が確立していて、思いを伝える力が高水準にありました。つまり、貧困下でも学力の高い子どもは、非認知能力が高いのです」

 「非認知能力は学力を底上げすると考えられます。これからは、意識して非認知能力を育てていくことが大切だと思います

 では、非認知能力はいつ育てるべきなのでしょうか。「4~5歳ぐらいから小学校中学年ぐらいが一つの山場だと思いますが、それを過ぎたからといって全くダメではないと思います。非認知能力と学力を両輪で育てていくことが大事。非認知能力を育てつつ、前回の記事で見たように、『勉強って面白い』『調べるって楽しい』ということが分かれば、『もっと勉強したい』につながります」