学級崩壊、低学年の暴力、不登校、小1プロブレムなど、小学校には様々な問題があります。そうした問題に直面した場合、親はどうしたらいいのでしょうか。28年間小学校教員として勤務し、学級崩壊や小1プロブレムなどの現場に詳しい白梅学園大学子ども学部子ども学科教授の増田修治さんに聞きます。1回目のテーマは「子どもが『学校に行きたくない』と言い出したら?」です。

「友達100人できるかな」というプレッシャー

 4月から新学年がスタートしました。新しい先生や新しいクラスメート、これまでとは違う環境に緊張している子どもも多いのではないでしょうか。なかには、学校に行くのをためらったり、「行きたくない」と言い出したりする子もいるかもしれません。

 「『友達100人できるかな』という歌詞がありますよね。私は、あの歌が子どもたちのプレッシャーになっているんじゃないかな、と感じています」。白梅学園大学子ども学部子ども学科教授の増田修治さんはそう言います。

 「例えば、小学校に入学すると、同じ保育園や幼稚園だった子が同じクラスにいない、あるいは1〜2人という場合もあり得ますよね。あの歌の歌詞のように、たくさんの友達をいきなりつくるのは、現実にはなかなか難しいです。大勢の初対面のクラスメートたちと大きな教室で一緒に過ごすわけですから、心細く感じるのは当たり前。学校に行きたくない気持ちが出てきてもおかしくはありません」

「行きたくない」理由は子どもによって様々

 では、子どもが「学校に行きたくない」と言ったら親はどうしたらいいのでしょうか。「なぜ行きたくないのか理由を探りましょう。行きたくない理由は、子どもによって異なります。『先生が怖い』『友だちとうまくいっていない』『勉強が分からない』『何となく行きたくない』などがあります」

 「低学年に意外とあるのが、『何となく行きたくない』です。先生が笑顔で出迎えてくれる保育園や幼稚園と違って、小学校は自分で歩いて門をくぐり、靴を履き替え、教室まで入っていかなくてはいけません。学校の校舎も、大人から見れば見慣れている大きさですが、保育園や幼稚園しか知らなかった子どもの目から見ると、巨大で圧迫感があります」

 「かつて、こんな生徒がいました。『学校に行きたくない』と言うので理由を聞いてみたところ、『学校が怖い』と。『学校が怖いんだね』と言ってから、どこが怖いのか詳しく聞いてみました」。ここで重要なのは、子どもの「怖い」という感覚を否定しないこと、と増田さん。「大人は反射的に『怖くないよ』と言ってしまいたくなりますが、『怖いのね』といったん受け止め、それから『どんなふうに怖いの?』と聞き出すといいでしょう」

 その子は「学校がお化けに見える」と答えました。そこで増田さんは、学校校舎の写真を撮影し、プリントアウトしてその子に見せました。「『どんなお化けが見えるか書いてみて』とペンを渡して写真に落書きをさせたんです。『こんな感じ?』とか一緒に色々話しながらお化けを描いたり、楽しく落書きしたりしているうちに、客観的に見られるようになったのでしょうね。その後は、学校に来られるようになりました。ちょっとした工夫で解決することが意外とあるのです」

低学年に意外とあるのが「なんとなく行きたくない」という理由。学校の校舎も保育園や幼稚園しか知らなかった子どもの目から見ると、巨大で圧迫感がある
低学年に意外とあるのが「なんとなく行きたくない」という理由。学校の校舎も保育園や幼稚園しか知らなかった子どもの目から見ると、巨大で圧迫感がある