高校で日本に戻ったら、まさかのモテ期到来

 バンカラな日本の男子校からアメリカにやってきたモーリー少年は、何を言うと女性が喜ぶかなんて分かるはずがありません。日本のごく普通の男の子のように、ギャグのつもりで下ネタを言って受けようとしたら、一斉にひかれました。

 どうやったらモテるか母親に相談すると、でたらめなアドバイスをくれるわけです。「絶対に割り勘にしろ」とか。それを真に受けて、デートした女の子がおごってほしくてお金がないフリをしているのに、「じゃあ、今日は僕が払っておくから明日までに返して」とか言っちゃってました。それで絶交されるというね(笑)。

 1学年上に、勉強はそれほどできないけれどモテまくっているアニキみたいな人がいて、その人からも色々指南を受けました。今思うと、そこまで女の子の扱いにたけているわけではないんだけど、僕が憧れのまなざしでいるものだから、優越感に浸って散々あることないこと吹き込まれて。「こうやるとムードが高まって女の子はキスさせてくれる」とかね。で、僕は分かった気になって、デートをしてくれる人に教わったことを一生懸命適用しようとしては拒絶されました。

 勉強はできるけれど社交性では奥手といういびつなモーリー少年は、そんなふうに2年ほどをアメリカで過ごし、また日本に戻ることになりました。そこで何が起きたか。

 なんと、オールマイティーになっちゃっていました。勉強もそこそこ分かるし、広島に戻ったら急にモテまくったんです。アメリカではいくら頑張っても「見え透いたことをするな」って相手にされなかったのに、こっちではプレゼントを持っていくと素直に大喜びされました。当時は70年代後半、周囲に女の子と付き合っている人はほとんどいなかった。文化が全然違っていたんですね。

 でもそれが思いがけない騒ぎに発展し、僕は編入した修道の高校を自主退学することになります。

(取材・構成/日経DUAL編集部 谷口絵美 写真/坂斎清)

 
モーリー・ロバートソン
モーリー・ロバートソン 1963年、ニューヨーク生まれ。日米双方の教育を受けた後、1981年に東京大学とハーバード大学、MIT、スタンフォード大学などに同時合格。東大を1学期で退学し、ハーバード大へ。電子音楽とアニメーションを専攻し、88年に卒業する。84年、在学中に刊行した自叙伝『よくひとりぼっちだった』(文藝春秋)が5万部を超えるベストセラーに。大学卒業後は日本に拠点を置き、ラジオパーソナリティーとしての活動を経て、現在は国際ジャーナリスト、DJ、ミュージシャンとして幅広く活躍中。「スッキリ」(日本テレビ)、「所さん!大変ですよ」(NHK総合)などにレギュラー出演。近著に『「悪くあれ!」窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。