気管支せんぞく、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、食物アレルギー……その種類はさまざまながら、厚生労働省「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書」によると、アレルギー疾患の患者は、2005年時点で日本人の約3人に1人だったのが、2011年時点では約2人に1人と、大幅に増加しています。

アレルギー疾患になってしまうと、症状が現れないように、例えば食物アレルギーなら食べ物が制限されたり、その他のアレルギーでも症状の原因となるものを身の回りから除去したりと、生活に大きな影響が出ます。大人になってからスギやヒノキの花粉症になり、春中、マスクをしたり抗ヒスタミン薬を服用しなければならなくなることがあったり、仕事にも影響が出ているという人は多いことでしょう。そのため、近年はできるだけ乳幼児期から小児期にかけてアレルギー疾患を早期発見・早期治療し、重症化を防ぐため、法整備により、研究・治療に力が入れられています。

そんななか、アレルギー児を支える全国ネットのNPO、アラジーポットが「アラジーポット学びの場 講演会」を2月11日に国立成育医療研究センターで開催。その一部を紹介します。今回はアレルギー診療のガイドライン作成や吸入ステロイドの普及に努めてきた国立病院機構 福岡病院名誉院長、西間三馨さんの講演です。

【子どもの未来を守る アレルギー最前線】
(1) スギの舌下免疫療法は7~8割に有効 子にも可能←今回はココ
(2) アレルギー疾患発症予防は生後4カ月までが肝心
(3) 鶏卵・人工乳 早い摂取で食物アレルギー発症予防
(4) 保育園・学校・外食 社会のアレルギー対応は十分か

どの病院でも「かかっていいレベルの医療」を受けるための法律

国立病院機構福岡病院名誉院長の西間三馨さん
国立病院機構福岡病院名誉院長の西間三馨さん

 「アレルギー」とひと口に言っても、疾患も出てくる症状も人によってさまざまです。特にアレルギーになりやすい子どもは、成長するにつれて、いろいろなアレルギー疾患に順番にかかっていく「アレルギーマーチ」に陥りやすい傾向があります。このためぜんそくのために小児科に行った次の日には、アトピー性皮膚炎のために皮膚科に行かなければならない、来週は食物アレルギーの治療のために少し離れた大学病院にも……などと、あちこちの病院にかからなければならないということも少なくありません。

 そんななか、すべてを診ることができるアレルギー医が強く求められ、日本アレルギー学会では、成人のぜんそく、小児のぜんそく、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、じんましん、接触皮膚炎、薬疹、フルーツラテックス症候群、口腔アレルギー症候群などに対する総合ガイドラインを2007年から作るようになったと言います。

 「ガイドラインにある通り、目は結膜炎、鼻は鼻炎で肺はぜんそく、皮膚はアトピー性皮膚炎で消化器アレルギーがあって副鼻腔炎があるし、大人の食物アレルギーとも言われるフルーツラテックス症候群、口腔アレルギー症候群といったものが、一人の人の中で、さまざまな症状で併発する可能性があるんです。ですから、全身疾患として診るべきという見解になりました」

 そこでアレルギー疾患の患者がどのような病院にかかっているのか、どういう医師に診てもらっているのかの全国調査を行ったところ「アレルギーの患者さんを1週間で10人未満しか診ていない医師と、同じく100人以上を診ている医師を比べてみると、100人以上のアレルギー患者さんを診ているのが非アレルギー専門医である確率が高いことが分かったんです。ということはつまり、どの病院でも『かかっていいレベルのアレルギーの医療』を受けるためには、非アレルギー専門医の教育が重要と考えられるようになりました」

 そこで2014年に成立したのが、「アレルギー疾患対策基本法」です。