親は見事な建物に感心し、娘は石拾いに夢中になる

 到着後、まず目についたのは、威風堂々とした門構えだった。足利学校のシンボルともいえる「學校門」である。訪れたのがちょうど11月の終わりごろだったこともあり、背後にそびえ立つ銀杏がイエローに色づいており、見事な情景を作り上げていた。

1668年に創建されたといわれる學校門
1668年に創建されたといわれる學校門

 この學校門をくぐったすぐ先に、見どころの一つである「字降松(かなふりまつ)」が立っている。学生たちが読めない字などを紙に書いてこの松の枝に結んでおくと、翌日にはふりがなが付いていたことからそう呼ばれるようになったのだとか。なかなか粋なエピソードだ。

 入口でもらったパンフレットに書かれた説明文を眺め、ふむふむとうなずきながら歩を進める。すると、隣で娘が突然しゃがみ込んだ。学校の地面には玉砂利が敷き詰められている。どうやらそれを拾い集めているようだった。

 「はいコレ、あめだよ、あげる~」と言って、やや平べったい石ころを手に取って見せてくれた。石を何かに見立てて遊ぶ。長女お得意の「石拾い」である。そういえば、この連載でも以前に紹介したことがあった(「川遊びは子どもとの触れ合いに最適 遊び方も無限」)。

 大人である親が目の前に立つ古めかしい建物に感心させられている一方で、小さな子どもは足元に気を取られている。視点の違いを面白く感じた。

昔の子どもたちも石拾いをして遊んだのだろうか
昔の子どもたちも石拾いをして遊んだのだろうか

 敷地内でもひときわ強い存在感を放つのが、「方丈(ほうじょう)」と呼ばれる大きな建物。学生の講義や学習、行事などに用いられたそうで、今でいう校舎の役割を担った場所だろう。

 方丈では靴を脱いで中へ入り、内部を見学できるのだが、娘は畳敷きの大広間に大興奮していた。考えたら、彼女にとってはだだっ広い和室そのものが、初めての体験かもしれない。まるでどこかのテーマパークにでも遊びに来たかのように目を輝かせていて、親としては予想外の好反応にほくそ笑んだ。

広々した空間に大はしゃぎ
広々した空間に大はしゃぎ

 足利学校では「自学自習」の精神が根づいていたという。そのことを反映させたのか、方丈内では机が設置され自習用のプリントが配られていた。ささやかながら、なかなか気が利いた演出だなあと感心させられる。

 ちなみにプリントの内容は漢字の読み方などを答えるもので、「漢字試験」と題されていた。3歳児にはまだ難しいが、年齢次第ではきっとかなり楽しめるはずだ。

問題を解く代わりにお絵かきをして楽しむ
問題を解く代わりにお絵かきをして楽しむ
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