「ザリガミ、つったのヨ~」

 話は少し遡る。近所の大きな公園へピクニックに出かけたときのことだ。園内の沢のようなところで、子どもたちがザリガニ釣りをしていた。面白そうだなと思って見物していると、その子たちが親切にも竿を一本貸してくれた。

 長女が自分もやってみたいというので、竿を持たせてみた。すると――なんと釣れてしまったのである。いやはや、驚いたのなんの。人生初のザリガニ釣りだ。これぞまさしくビギナーズラックというやつだろう。

 「ザリガミ、つったのヨ~」

 翌日、保育園で先生に誇らしげに報告していたらしい。ちなみに彼女はザリガニのことを「ザリガミ」と間違えて覚えている。それはそれでなんだかかわいらしい響きなので、あえて訂正していない。

 「私も小さいころ、よく釣ったなあ。ザリガニ」と妻が目を細める。どちらかといえば男子の遊びというイメージのザリガニ釣りだが、話を聞いてみると妻は結構本格的にやっていたらしい。これは子どもが生まれて以来ずっと感じていたことだが、子育てというのは自分の人生を追体験するような楽しみがある

 そんな経緯があって、わが家にザリガニ釣りブームが到来したのだった。この日は水族館で水の中の生き物をたっぷり見た後だけに、モチベーションはさらに高まっていた。というわけで、水族館お出かけのついでに、ザリガニ釣りをしていくことにしたのだ。子ども以上に、親のほうがやる気だったりもするのだが……。

ガーン! 公園内は「釣り禁止」

 今回訪れたさいたま水族館は、羽生水郷公園の中にある。広大な敷地内には、「水郷」と付いているだけあって、水場が多い。いかにもザリガニが棲んでいそうな雰囲気だ。実際、水族館でもザリガニが展示されていた。これはきっと釣れるのではないかと、アタリをつけたわけだ。

 ところが、いざ釣りをしようという段になって問題が発生した。情報収集がてら水族館の人に「このへんは、ザリガニは釣れますかねえ?」と聞いてみたら、次のような答えが返ってきたのだ。

 「……すみません、羽生水郷公園では動植物の採取が禁止されているんです」

 ガーン! なんとザリガニ釣りはしてはいけないのだという。落胆する僕を哀れに感じたのか、水族館の人はこうも教えてくれた。

 「園内はダメですけど、園の周辺でなら大丈夫なところもあると思います」

 なるほど、やはりザリガニ自体はこのかいわいにいるようだ。それを聞いて、希望が見えてきた僕たちは、水族館から移動することにした。

 向かった先は、公園のすぐそばにある「キヤッセ羽生」だ。野菜の産直販売などを行っている道の駅のような施設なのだが、自然も豊かで広々とした池もある。インターネットで調べると、ここでザリガニを釣ったという情報があった。

キヤッセ羽生。園内には小さな子ども用の遊具などもある
キヤッセ羽生。園内には小さな子ども用の遊具などもある