展示はやや地味だが子連れにはありがたい配慮が

 あいにくの空模様だからと水族館を行き先に選んだわけだが、到着したときにはなんと全く雨が降っていなかった。天気予報は案外アテにならない。雨どころか、空は青く晴れ渡っており、日差しが暑い。慌てて子どもに帽子をかぶらせたほどだ。

 まあ、天気が悪化したわけではなく、好転したのだからそれはそれで文句はない。気を取り直して、水族館へ突入する。

 入場料は通常は大人310円なのだが、このときは特別展を開催しており410円だった。それでも水族館の料金としては安い部類に入るだろう。なお、未就学児は無料だ。

 肝心の展示内容はというと――よくも悪くも地味だなあ、というのが正直な感想だ。玄人向けと言ってもいいかもしれない。淡水魚専門だから、カラフルな熱帯魚などはおらず、全体感としてはどうしても色味の華やかさに欠ける。水槽内の水草や石などと同じ色をした、いわゆる保護色の生物が多いせいもあるだろう。当然ながらペンギンはいないし、イルカのショーなどもない。

 とはいえ、考え方によってはそれらの特徴こそがメジャーな水族館にはない魅力なのだともいえるだろう。一見すると地味ながら、見続けていると魚ごとに個性があることが分かって面白い。サンショウウオなど見た目のインパクトが強烈な生き物もいる。少なくとも、娘にとっては十分に刺激的だったようだ。目を輝かせながら水槽を見つめ、大はしゃぎしている。

 「あそこにいる~! ココにもお魚さん! ねえねえ見て見て!」

 魚を見つけるたびに親に教えてくれる。最近は何かあると、それを誰かに報告せずにはいられない時期のようだ。親切なようでもあるし、ちょっぴりお節介さんでもある。こういうとき、ウッカリ聞き流しでもしようものなら、しつこく同じことを言ってくるので、「うんうん、そうだねえ」と、しっかり相づちを打たねばならない。親バカ的発言をすると、こういうささいなやり取りがまんざらでもなかったりするのだが……。

 個人的にこの水族館でいいなあと感じた点は、水槽の前が段になっていることだ。段の上に乗れば、背の低い子どもでも水槽が間近に見られる。段は幅が広いので、ベビーカーをそのまま乗せることができるのもありがたい。おかげでまだ1歳に満たない次女も、目の前を泳いでいく魚たちに見入っていた。

あまりに真剣な表情なので思わず笑ってしまった。
あまりに真剣な表情なので思わず笑ってしまった。

 以前訪れたしながわ水族館などは、開園前から長い列に並ばなくてはいけないほど混雑していたが、こちらはすいているのもいい。客層はやはり子ども連れのファミリーが中心のようだ。それもわが家のような、まだ未就学と思しき小さな子どもたちが多かった。館内には授乳室や赤ちゃん用のプレイルームなども用意されている。

 パッと見の派手さこそないものの、だからこそ自分たちのペースでゆるゆると楽しめる。僕たちにとっては、なかなか居心地のいい水族館だった。

 この日はこれで終わりではない。後編ではもう一つの旅のテーマ「ザリガニ釣り」についてお送りする。

吉田友和
旅行作家
吉田友和 1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行ながら夫婦で世界一周を敢行。2005年より旅行作家として本格的に活動を開始。国内外を旅しながら執筆活動を行い、短期旅行を中心に、ここ数年は“半日旅”にも力を入れている。著書は『3日もあれば海外旅行』『10日もあれば世界一周』(共に光文社新書)、『思い立ったが絶景』(朝日新書)や自身をモデルとしてドラマ化もされた『ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン』(幻冬社文庫)など多数。近著は『東京発 半日旅』(ワニブックス)。