子連れ旅行には行きたいけれど、子どもも楽しめるお出かけ先が分からない。そもそも泊まりで出かける余裕がない――。

 そんなDUAL世代にピッタリなのが、「半日旅」という旅のスタイル。『東京発 半日旅』(ワニブックス)の著者で旅行作家の吉田友和さんは、思い立った瞬間にでも出かけて、半日くらいで帰ってこられる、そんなお手軽で気まぐれな旅を「半日旅」と定義しました。この連載は、そこに“子連れ”という要素を加え、DUAL世代もすぐにでも出かけたくなるような旅ルポをご紹介します。

 今回のテーマは「親子で川遊び」です。上編では、2歳の長女の「石拾いブーム」をきっかけに、川遊びの半日旅に出かけた筆者一家。神奈川県の秦野戸川公園で慣れない子連れバーベキューに挑戦することになったが――。

 今回は下編をお送りします。

半日旅について語った、吉田さんの過去インタビューはこちら
気ままに楽しむ「東京発“子連れ”半日旅」の魅力
“子連れ半日旅”はハプニングも思い出に

「東京発“子連れ”半日旅」の3カ条
●旅先は子連れで訪れることが可能な場所であること
●午前中に出発すれば、夕食は自宅で取ることができるくらいのゆったりめのスケジュール感であること
●テーマパークなど人が多く集まる場所は基本的には行かないこと
神奈川県立秦野戸川公園
神奈川県立秦野戸川公園

妻の表情は鬼気迫るものだった

 石拾いが終わってバーベキュー場に戻ってくると、妻が炭火をおこしていた。夫婦2人だったころはどちらかといえば僕が担当だった火おこしだが、子連れバーベキューとなると、手が空いている人間がやって効率化を図るのがベターだろう。

 妻はまさに着火したてで、炭の配置を調整していた。テーブルにはバーベキューグリルが備え付けられており、なおかつ炭や着火剤なども現地で買えるため、何かと荷物が増えがちな子連れにとってはありがたい。

 さらに手軽に楽しみたい人には、食材も付いた「手ぶらバーベキュー」も可能だ。ただ食いしん坊なわれわれとしては、食材にはこだわりたいところ。今回は自前で調達してきていた。

 テーブルにはめ込まれたグリルは、最大10人まで対応するほど大きなもの。パッと見、なかなかの存在感である。とはいえ、僕たちは大人2人に2歳児と0歳の赤ちゃんという少人数だから、妻はコンパクトに使いやすく炭を組もうとしていた。

 表情は真剣そのもので、鬼気迫るものがある。

「料理はタイミングが命なのよ」

 妻が眉間に皺を寄せる。それゆえ、何か作業をしている最中は気が抜けず、ボンヤリしている暇もない、らしい。

 「こうしたほうがいいんじゃないの?」などと僕がうっかり口に出そうものなら、ピシャリと言い返されそうなのが目に見えている。ここは静かに見守るのが得策だろう――と意を決したのだが、隣にはおとなしく待っていられない者がいた。

 「おなかへったのヨ……」

 長女である。テーブルの上に置かれた肉などを前にして、食欲が刺激されたのだろう。彼女は最近、朝ごはんをあまり食べてくれず、そのためかお昼前には「おなかへった」となってしまうパターンが多い。

 ともあれ、2歳の娘に忍耐力を求めるのも無理な話だ。これから焼くのだと説明してもらちが明かない。一秒でも早く何か食べさせろと言わんばかりの勢いである。