オープンエアの高速道路はまるで遊園地のアトラクション

 見上げれば右も左も高層ビルという都会ならではの光景は、屋根がないバスだからこそ満喫できるものだ。そのことを強く感じたのは、東京タワーの真下を通ったときのこと。首をグイッと後ろに倒すと、巨大な構造物が迫って見える。隣に座っていた長女は圧倒されたのか、しばし口数が少なくなった。

屋根がないので、こんな写真を撮ることもできた
屋根がないので、こんな写真を撮ることもできた

 今回参加したのは「東京タワー・レインボーブリッジコース」。ツアー名の通り、東京タワーと、もう一つの目玉となるのがレインボーブリッジなのだが、橋を渡るためにバスが首都高に乗り入れる瞬間は大いに盛り上がった。

 オープンエアの状態で高速道路を走る。これは、なかなかできない経験だろう。2階座席で高さがあるから、他の車が自分たちの目線の下を走っているのが不思議な感覚である。道路の上にせり出た標識が頭上近くを通過するのも迫力があっていい。風がビュンビュン吹き付けてくるから結構寒いのだが、まるで遊園地のアトラクションに乗っているときのような興奮を味わえた

 レインボーブリッジの上から東京湾を見下ろす。この日は幸いにも快晴で、青空をバックにビル群が建ち並ぶ、これぞ東京とでも呼べそうな絶景を拝めた。

 「うわあ、都会だなあ……」

 と、いまさらながらの感想を漏らしてしまった。気分はすっかり観光客だ。

視点が変わると見える景色も違ったものに
視点が変わると見える景色も違ったものに

 橋を渡った後は、豊洲を経て築地方面へ。市場は移転してしまったが、築地周辺にはおいしいお店がたくさん集まっている。玉子焼きと海鮮丼が安くてオススメだとガイドさんが教えてくれた。ガイドさんは出発してから最後までずっとしゃべりっ放しだ。子どものケアをしながら景色に気を取られていたので、せっかくの解説をじっくり聞けなかったのは反省点である。

 やがてバスは銀座の目抜き通りへ。新幹線が走るJRのガード下をすれすれの高さでくぐる瞬間もまたスリリングで、客席からは「おお~っ」とどよめきの声が上がる。やがてバスは皇居のお堀沿いをぐるりと回り、出発地に帰ってきたのだった。

 以上、あっという間の50分。期待を超える内容で、東京のすてきなところを再発見したような手応えが得られた。子どもたちも刺激を受けていそうだったが、むしろ親のほうが楽しんでいたような気がする。

 「おなかへったよ~」

 バスが停車した途端、長女が口をとがらせ始めた。時計を見ると、もうお昼ごはんの時間だ。東京駅でお弁当を購入し、次なるスポットへ移動する。向かった先は……皇居である。皇居でランチ? その模様は後編でお届けしたい。

関連サイト
SKY BUS(スカイバス)
https://www.skybus.jp/

吉田友和
旅行作家
吉田友和 1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行ながら夫婦で世界一周を敢行。2005年より旅行作家として本格的に活動を開始。国内外を旅しながら執筆活動を行い、短期旅行を中心に、ここ数年は“半日旅”にも力を入れている。著書は『3日もあれば海外旅行』『10日もあれば世界一周』(共に光文社新書)、『思い立ったが絶景』(朝日新書)や自身をモデルとしてドラマ化もされた『ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン』(幻冬社文庫)など多数。近著は『東京発 半日旅』(ワニブックス)。