1歳の次女は参加できず…
かまぼこ博物館では、何種類かの体験教室が開催されている。今回挑むのは「かまぼこ・ちくわ手づくり体験」だ。お目当てのかまぼこに加え、ちくわも手作りできる。体験時間は50分、料金は一人1620円(税込)。博物館に入ってすぐのカウンターで受け付けを済ませた。
小学生未満の子どもには親が付き添う形となる。悩ましかったのが、1歳7カ月の次女の扱いだ。父親である僕が長女を、そして次女はママが担当することにして、とりあえず二人分で申し込んでいたのだが、正直、体験内容からして次女にはまだ難しそうだった。
「帽子とエプロンを着用することができれば、問題ございません」
申し込む際の注意書きにはそう記載されていた。年齢制限こそないものの、これが体験できるかどうかの最低条件と言っていいだろう。ところが、いざ次女に帽子をかぶらせてみると、手で払ってすぐに脱いでしまう。そもそも一カ所にジッとしていられないから、かまぼこ作りどころではない。
その場で妻と相談した結果、今回は長女と私だけで参加することにした。子連れの旅では、思うようにいかないことも案外多い。無理そうなときは潔く諦めて、気持ちを素早く切り替えたいところだ。
ちなみに帽子とエプロンは博物館のほうで用意されているが、わが家では子どものエプロンだけは持参した。借りられるものだと幼児には大き過ぎるので、持ってきて正解だった。着用したら、手をしっかり洗い、指定された番号の席につく。
まずは、かまぼこ作りから。最初に先生がお手本を見せてくれるのだが、これがまさに職人技だった。板の上にすり身をのせて、ケーキ作りで使うヘラのような器具で形を整えていく。
「一本のかまぼこには、7匹の魚が使われているんですよ」などといった豆知識を披露してくれつつ作業を進める。説明に聞き入り、華麗な手さばきに見とれているうちに、あっという間に見事な半円形が出来上がった。
さすがプロだなあと感心させられながら、続いて自分たちも同じようにやってみる。先生はいかにも簡単そうに実演していたが、これが思った以上に難しい。娘と一緒にヘラを持って、すり身の塊を塗っていくのだが、どんどん形がいびつになっていく。「えっ、これ……かまぼこなの?」と疑問の声が聞こえてきそうなほどの、異形の物体が完成したのだった。
内心ひそかに思ったのは、これがママだったなら恐らくもっと手際よくできたんだろうなあということ。料理に関しては、我ながらセンスのなさを自覚している。
「ちちさんはさー、ごはんはつくれないの?」
以前、長女にこんなことを言われたことを思い出す。わが家ではパパのことを「ちちさん」と呼んでいるのだが、小さな子どもなりにパパとママの能力差を察しているのかもしれない。せめて、かまぼこ作りぐらいは父親の底力を発揮しようと目論んでいたのだが……。