公園ごとに地域性がある

 子どもが生まれてから、旅行先にある公園で遊ぶ、というパターンも増えてきた。子どもには伸び伸びと体を動かせる場所が必要だ。娘たちが観光に飽きたときの駆け込み寺のような感じで、現地で公園を探すようになった。

 ところが、各地の公園を訪ね歩いているうちに気が付いたのだが、これが意外と奥が深い。いわば、アウェーの公園である。自宅近所のおなじみの公園、すなわちホームの公園で遊ぶときとは異なる視点で向き合えるのが新鮮だ。

 特に興味深いのが、公園ごとに地域性のようなものが見られるということ。東京の公園では当たり前のことが、地方へ行くと案外通用しなかったりする。価値観の違いと言ってもいいかもしれない。

 例えば、以前とある公園へ立ち寄ったときのこと。当時2歳だった長女が滑り台の階段を上っていると、見るからに年長と思しき男の子が背後からドカドカ駆け上ってきて、娘が手すりにかけている手を払う勢いで追い越していった。

 幸いけがなどはなかったので、「まあ、子どものすることだし……」と何も言わなかったのだが、同じようなことがそれから何度も続いたので驚いてしまった。

 近所の公園だと、こういうことはまず起きない。子どもの親たちが目を光らせているからだ。自分の子が他の子に迷惑を掛けそうになったら、「〇〇くん、じゅんばん守ってね」などと親が注意する。そうすることが暗黙のルールになっている雰囲気すらある。

 もちろん、その公園でも親が子どもたちに同伴していた。けれど、子どもの行動にいちいち注意したりしない。というより、そもそもみんなそこまで熱心に見守っていなさそうだった。親同士で会話に花を咲かせていたり、スマホの画面とにらめっこしていたり。これはこれで自由だなあ、と感心させられたのだ。

 どちらがいい、悪いという話ではない。自分が当たり前だと思っていたことが、必ずしも常識ではないと気が付く。これもまた旅の効用の一つだ。

 場面を昭和の森に戻そう。果たして、たき火はうまくいったのか。おいしい焼き芋は食べられたのか――その話は後編で。

公園の有無が、ときには旅先選びの条件になることもある
公園の有無が、ときには旅先選びの条件になることもある
吉田友和
旅行作家
吉田友和 1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行ながら夫婦で世界一周を敢行。2005年より旅行作家として本格的に活動を開始。国内外を旅しながら執筆活動を行い、短期旅行を中心に、ここ数年は“半日旅”にも力を入れている。著書は『3日もあれば海外旅行』『10日もあれば世界一周』(共に光文社新書)、『思い立ったが絶景』(朝日新書)や自身をモデルとしてドラマ化もされた『ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン』(幻冬社文庫)など多数。近著は『東京発 半日旅』(ワニブックス)。