仕事から家事・育児まで、どんなことも発想の転換で楽しんでしまうのが土屋礼央さんの得意技。その原点は、子どものころの「ファミコン」にまつわる体験にあるのだとか。望み通りにならない状況を、自らのアイデアと工夫でいかに面白くするか。連載最終回も、土屋さんのポジティブなメッセージが全開です!

赤いヒーターを見て「うちにディスクシステムがある!」と脳内変換

 音楽の道に進むということに関して全く迷いがなかった僕ですが、思い返せば、昔から何かをまねるということがなくて、いつも「オリジナル」でした。子どものころから即興で鼻歌を歌ったり、親戚の前で歌って踊ったりしていたらしくて、ビデオにも残っています。

 一つ、今でも親に感謝していることがあります。それは、ファミリーコンピュータを買ってもらえなかったこと。僕の小中学生時代はファミコンの全盛期です。それなのに、親いわく「あんなものはダメだ、体に悪い!」。根拠不明、何だそれ?って話です。

 ダメと言われても、僕はやりたくて仕方がなかった。欲しかったのは、ROMカセットに代わって登場した「ディスクシステム」というモデル。ディスクを読み取る機器が赤い箱型をしていたんですが、それがうちにあったセラミックヒーターの色とそっくりだったんですね。で、僕はヒーターを薄目で見て、「わあ、うちにディスクシステムがある!」って。もうね、石をなめて塩の味がするって思い込むくらいの脳内変換ですよ。

 ファミコンは友達の家に遊びに行ったときにやらせてもらいました。「ファミリージョッキー」という競馬ゲームが好きで、本当は家でもやりたいけれど、うちにはない。そこで僕は、馬の名前を決めて、サイコロで出た数で競争させるという自作の遊びを思いついたんです。