馬にスピードとスタミナを設定することで、ドキドキできる展開に

 

 ファミリージョッキーは馬ごとにスピードやスタミナ、ジャンプといった能力が設定されていて、それが勝敗を左右します。サイコロだけだと単なる運なので、僕も馬に能力を設定することにしました。

 例えばスピードが4の馬は、サイコロで5が出たら5+4で9進む。でもこれだとスピードが速い馬が勝ってしまうだけでつまらない。競馬っていうのは、先行する馬の体力がなくなって後から差し馬が追い上げるのが盛り上がるポイントです。スピードがあるタイプの馬は途中から息切れするのも面白いと思い、スタミナの要素も加えました。

 5や6が出たら飛ばし過ぎなので、5はスタミナがマイナス1、6はマイナス2になる。スタミナ5の馬がサイコロで6を連続3回出すとスタミナ0になるので、進むマスが半分になる、みたいな。こういう仕組みを全部作れば、紙と鉛筆、サイコロを使って一人で遊ぶのでもドキドキできました。

「どうすれば楽しめるかを自分で考える」という発想が身に付いた

 当時は携帯もネットもないですから、放課後は家でダラダラしているだけ。時間は山ほどあったので、他にも電車とか相撲とか、毎日のように何種類もゲームを考えていました。

 今思うと、あの時間はすごく大きかった。ファミコンがなかったから「自分ならどうするか」ということを発想せざるを得なかったわけで、それは今の自分にすごく生きています。どんなことにと言われれば、それはもう全部です。0から1をどう生み出すか。

 タレント業とミュージシャン業と色々やらせていただいていますが、タレントのお仕事は、基本は「いただく」お仕事。相手の要望があって、それに応えるのが役目です。

 でも、何か用意されることに慣れ過ぎてしまうと、0からやってくださいとなったときに、発想を生み出せません。僕はもともと構成作家やプロデューサーのような裏方気質なところがあって、「これをどういう発想に転換すれば、自分にとって面白い、ためになる方向に持っていけるか」というのをいつも考えます。仕事だけでなく、例えば日常生活で電車の遅延でイライラしたときなんかもそう。こういう発想って、元をたどると「ファミコンがないなら、どうしようか」から始まっているんですよね。

 ゲームを自分で作って楽しめたのも、「ファミコンがない、イコールつまらない」と決めつけなかったからできたこと。答えを決めてしまうとつまらなくなってしまうし、自分自身の成長も止まってしまう。そこは意識しています。