「サッカーの基本は『ボールを止めて蹴る』という動作です。その基本ができないと次のことはできません。レンガを積み重ねて家を造るときに一つでも抜けていたら完成しないように、基本練習ができていないと次には進めません。その繰り返しです。基本の練習からベストを尽くす。サッカーを通して、どんな状況に置かれても常にベストを尽くす姿勢が身に付きました

 その姿勢は子育てにおいても変わらない。「子育ては大変なことも多いけれども、例えば『去年の今』はもう二度と戻ってきません。『あの時こうしておけばよかった』という悔いが残らないようにしたいです」

 子育てを始めてからは、人に頼る、甘えることの大切さも実感している。「悩んだり困ったりしたときは、一人で抱え込まず、夫や周囲の人などに相談したり、うまく甘えるのが良いと思います」

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 産後、数カ月ごろから少しずつ仕事を再開した澤さん。後編となる次回は、澤さん夫婦の「チーム力」と「キャリア」について話を伺う。

澤 穂希(さわ ほまれ)
1978年生まれ。東京都出身。15歳で日本代表に初選出。2011年ドイツ女子W杯で、キャプテンとしてなしこジャパンの優勝に貢献し、大会MVPと得点王に輝く。帰国後、なでしこジャパンは、「国民栄誉賞」を受賞。 同年度のバロンドール授賞式にて「FIFA女子年間最優秀選手」を受賞。2012年ロンドン五輪では、銀メダルを獲得。現役時代を通して、五輪に4大会出場、女子W杯に6大会連続出場を果たした。2015年の夏に結婚、このシーズンを最後に、37歳で現役引退。現在一児の母。著書に『夢をかなえる。 思いを実現させるための64のアプローチ』(徳間書店)、『日めくり 澤穂希 夢をかなえる』(PHP出版)など

取材・文/小林浩子(日経DUAL編集部) 写真/稲垣純也