タレント、イラストエッセイストとして華やかな世界で活躍中の犬山紙子さん。一方、夫の劔樹人さんは、ミュージシャン・漫画家でありながら、専業主夫としての仕事を生活の中心に据え、娘チャゲちゃんの保育園の送り迎えにお世話に、と忙しい日々を送っています。そんなユニークな夫婦に、新時代の子育て事情はどのように映っているのでしょうか。犬山さんのエッセー、劔さんのマンガの2本立て連載でお伝えします。

夫婦が揃って子育てを始める環境は大切

 仕事柄様々な夫婦に取材をしているのですが、夫との関係が良好な家庭の一つの特徴として「里帰り出産をしなかった」というものがあります(もちろんマストではありません)。

 里帰り出産をしないということは、出産から産褥期の一番大変な時期を夫と共に過ごすということ。妻の大変さを目の当たりにした夫は最初から育児に参加するようになり、その後の関係性が良い印象を、取材を通して感じるようになりました。あくまでもこれは一つの傾向なのですが、何が言いたいかというと「どこで産むか」ではなく「男性が最初から子育てに参加する環境を整えるのが大事」ということです。一番大変な時こそ男性も一緒にということなんですね。

 そんなことをしみじみと感じている中、「男性の育休の義務化」というニュースが耳に入ってきました。5月23日に自民党の有志議員が男性の育休「義務化」を目指す議員連盟の発起人会を開催。6月5日には設立総会が開かれました。内容としては、企業に対して申請がなくても子どもが生まれた男性全てに育休を付与するというもので、最低でも3週間から1カ月の育休や、時短勤務を男性が今より取得しやすくなるそうです。

 義務というのは非常に強い響きですが、これまで男性の育休制度があっても6.16%しか使われていない現状を考えると、それぐらい強く言い切らないと男性が育児に参加することは難しいんだなということもわかります。育休、取りたくても「男が取るなんて、困る。その間仕事はどうするんだ」なんて空気に負けて取れない男性もたくさんいるんでしょう。中には仕事もしながら育児もやってほぼ徹夜状態で日々を過ごす父親のお話も聞きました。

「男性の育休の義務化」は児童虐待の減少にも影響する

 てなわけで、もうこれについては大賛成です。こういう議題が上がるだけでもまずは意識が少し変わります。もちろん現実問題難しい企業があるのは百も承知、国からの助成なども必要になると思います、それでも賛成です。というのも、まずは児童虐待が減るだろうと思われるからです。

 私は日頃、児童虐待防止に向けて「#こどものいのちはこどものもの」という活動をしているのですが、様々な方に取材をし、現場に伺い、本を読む中で、虐待を防ぐためには「親の孤立を防ぐ」というのが本当に大切だと思うようになりました。この孤立には精神の孤立ももちろん含まれます。いくら夫と一緒に住んでいようがワンオペで休めない、育児の悩みを打ち明けられないのなら、それは孤立だと思います。孤立の中の育児はどれほど辛いか。眠れない中、自分を責め、自分をケアすることもままならない日々。もちろん、ワンオペが虐待に直結するわけではなく、ただ、ワンオペとはそれほどまでに過酷であるということなのですね。