子どもの虐待防止に向けた活動や発信を続けている犬山紙子さんが、公認心理師で「親と子どもの臨床支援センター」代表理事の帆足暁子さんにコロナ禍での子育てやメンタルケアについてインタビュー。後編の今回は、大人のメンタルケア、イライラの解消法、パートナーとの関係について聞いていきます。

【犬山紙子さん×公認心理士・帆足暁子さん対談】
(前編)コロナ禍の子育て 虐待が不安な親に必要な言葉とは
(後編)イライラはコントロールできる 記録して根源知ろう ←今回はココ

大人のメンタルケアの方法 視点を未来へ

犬山さん(以下、敬称略) これからお聞きしたいのは、巣ごもり生活での大人のメンタルケアです。これまで私たち親は、保育園や学童、ベビーシッターに子どもを預けて仕事の時間をつくることができました。公的サービスや家事サービスなども自分の時間をつくる大きな助けになっていました。しかし、新型コロナウイルスの影響でそれができない人が多くなり、追い詰められている人が増えています。そんな親のメンタルをケアする方法、気持ちに余裕を持つ方法が知りたいです

帆足さん(以下、敬称略) 大人でも子どもでも、自分の自由な時間は必要なので、今はそれを持てないことへのストレスがあります。収束に向けて前進しているとはいえ、いつまで続くのかという不安もあります。

 メンタルをケアする方法は、誰かに話を聞いてもらって、気持ちの整理をするのが一般的ですが、緊急事態宣言が解除されても三密を避ける生活が続くでしょうから、対面での相談はまだ難しそうです。

 自分でできるメンタルケアとしては、目の前の不安や怒りを生じさせる現状の生活から気持ちを離し、視点を未来に向けるようにする方法があります。未来は希望です。自分の未来に向かってやれることを見つけてみましょう。例えば、これまでは忙しくて、自分がどう生きていきたいのか、じっくり考えた経験はあまりないと思いますが、今はいい機会です。

 自分はこれから何を一番大切にして生きていきたいか、誰をどんなふうに大事にしたいか、自分自身はどんなふうに大切にされたいか、など考えてみましょう。それらを実現する方法まで考えて、書き留めておくのもいいですね。そうやって一度しかない自分の人生を考えるチャンスにします。

 あるいは、1年後の自分や夫/妻、子どもに向けて、手紙を書いてみるのもいいですね。3年後、5年後、10年後、20年後と書きためていきます。将来、読んでみて、そのときの思いと重なっていれば感慨深いでしょうし、全然違っていたら大笑いかもしれません。そんな情景も思い浮かべながら、書いてみてください。

 未来について家族みんなで話し合ってもいいと思います。手軽なのは「コロナの巣ごもり生活が終わったら皆でどこに行きたい?」と家族で1つずつ挙げていくこと。「じゃんけんして勝った人が行きたいところに最初に行こう!」というようにすると、子どもでも「未来」に目を向けやすいでしょう。