犬山 パートナーとの間であっても「察してほしい」は難しいと思うのですが、実際には察してくれなくてイライラするという人は多いですよね。「こうしてほしい」という気持ちを上手に伝える方法はありますか?
帆足 イソップの『北風と太陽』が良いモデルです。まずは、イライラを怒りながらぶつけるのではなく、理性的に相手をよく見て、いろいろな角度からアプローチして見るといいと思います。自分の関わり方がうまくいったか、いかなかったかの評価も必ず記録してくださいね。
犬山 なるほど! どんな方法でアプローチするか作戦を練っていくのですね。
帆足 今は何でも取り扱い説明書(取説)があって、ゲームにしても攻略する情報が出回っているからそこに頼ってしまいますが、自分やパートナーとの関係だけは、自分で取説をつくって、進めていくしかないんです。誰しもいい面だけでなく、悪い面もあるから大変な作業です。でも、それはそれで楽しいと思いますし、許し合うことも大事です。
犬山 自分なりのコミュニケーションの型をつくっていくということですね。パートナーに対しては、イライラをぶつけ合う関係ではなく、意識して「親切をちょっぴり多めに」投げかけ合う関係に変えていくといいのですね。それによって「お! 今やって欲しかったことを言わないでもやってくれた!」ということが増えそうです。
帆足 子どもにも、そんなふうにコミュニケーションの取り方を見せてあげられればいいと思います。外出自粛で人に会えない、家族で巣ごもり生活を送るという状況で、イライラを感じて、その対処法に悩んだ人には、自分の感情をコントロールしたり、家族とのコミュニケーションの取り方を考えてみてほしいと思います。そうすることで、本当に人に優しくするとはどういうことかという視点を持てるようになるのではないでしょうか。
犬山 2回にわたって、虐待を予防する方法やパートナーとの接し方、親のメンタルケアの方法など、コロナが収束した後も役に立つお話をありがとうございました。
構成/福本千秋(日経DUAL編集部) イメージ写真/鈴木愛子
親と子どもの臨床支援センター代表理事、公認心理師、臨床心理士、保育士、幼稚園教諭免許
イラストエッセイスト