犬山 パートナーとの間であっても「察してほしい」は難しいと思うのですが、実際には察してくれなくてイライラするという人は多いですよね。「こうしてほしい」という気持ちを上手に伝える方法はありますか?

帆足 イソップの『北風と太陽』が良いモデルです。まずは、イライラを怒りながらぶつけるのではなく、理性的に相手をよく見て、いろいろな角度からアプローチして見るといいと思います。自分の関わり方がうまくいったか、いかなかったかの評価も必ず記録してくださいね。

犬山 なるほど! どんな方法でアプローチするか作戦を練っていくのですね。

帆足 今は何でも取り扱い説明書(取説)があって、ゲームにしても攻略する情報が出回っているからそこに頼ってしまいますが、自分やパートナーとの関係だけは、自分で取説をつくって、進めていくしかないんです。誰しもいい面だけでなく、悪い面もあるから大変な作業です。でも、それはそれで楽しいと思いますし、許し合うことも大事です。

犬山 自分なりのコミュニケーションの型をつくっていくということですね。パートナーに対しては、イライラをぶつけ合う関係ではなく、意識して「親切をちょっぴり多めに」投げかけ合う関係に変えていくといいのですね。それによって「お! 今やって欲しかったことを言わないでもやってくれた!」ということが増えそうです。

帆足 子どもにも、そんなふうにコミュニケーションの取り方を見せてあげられればいいと思います。外出自粛で人に会えない、家族で巣ごもり生活を送るという状況で、イライラを感じて、その対処法に悩んだ人には、自分の感情をコントロールしたり、家族とのコミュニケーションの取り方を考えてみてほしいと思います。そうすることで、本当に人に優しくするとはどういうことかという視点を持てるようになるのではないでしょうか

犬山 2回にわたって、虐待を予防する方法やパートナーとの接し方、親のメンタルケアの方法など、コロナが収束した後も役に立つお話をありがとうございました。

構成/福本千秋(日経DUAL編集部) イメージ写真/鈴木愛子



帆足暁子(ほあし あきこ)
親と子どもの臨床支援センター代表理事、公認心理師、臨床心理士、保育士、幼稚園教諭免許

帆足暁子 臨床心理士としてほあしこどもクリニック(2020年1月末閉院)において子育て相談や心理相談で、日々子どもや保護者と向き合う一方、幼稚園教諭や保育士の資格を生かし、大学では子どもと保護者を大切にできる保育者の養成に携わる。2020年4月に東京・三鷹市に親と子どもの臨床支援センターを開設。著書に『0、1、2歳児 愛着関係をはぐくむ保育』(学研プラス)、『育てにくさをもつ子どもたちのホームケア』(診断と治療社)など。
犬山紙子(いぬやま かみこ)
イラストエッセイスト
犬山紙子 1981年生まれ。物事の本質を捉えた歯切れの良い発言が共感を呼び、TVや雑誌、Webなどで活躍中。2014年8月にミュージシャンの劔樹人さんと結婚し、2017年1月に女児を出産。現在は劔さんが家事・育児をメインで担当する共働き生活を送っている。志を同じくするタレントたちと児童虐待の根絶に向けた活動「♯こどものいのちはこどものもの」、社会的養護を必要とする子どもたちに支援を届けるプログラム「こどもギフト」にも取り組んでいる。著書に『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社)など。